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2月の出来事・考え事

[2003-2-14(金)]
「ドイツの最も美しい本」展

空木茜
akane8@mx2.ttcn.ne.jp

前回、この展覧会について説明不足でしたので、付け加えます。
「ドイツの最も美しい本」展 Die schösten deutschen Büherはドイツ・エディトリアルデザイン財団が毎年おこなう、その年度にドイツで刊行された図書の中から、最も美しい本を選出し発表するコンクールです。

この組織を支えているのは、ドイツ書籍販売組合+ドイツ国立図書館+フランクフルト市+マインツ市+協力企業+いくつかの州+個人など多くの賛同者の下に運営されています。

コンクールの審査は、技術審査、主任審査、児童書・青少年図書審査、推薦図書、実用書などの各分野で行なわれ、若手とベテランの両サイドの意見が尊重されています。審査員は任期があり新風を入れるよう工夫されています。
デザインコンクールなので、審査基準は
1.文字・文字組みと印刷。活字か電子製版かなど製版システム。コンピュータによる印刷技術。色版、紙質など環境へも配慮されているか。
2.製本技術
3.美しさ。最も重要視されるコンセプトの一貫性――内容を的確に表現しているか。図版のバランス、イラストの質、読みやすさなど。
これらの基準を審査員は応募された本の一冊ずつ、審査用紙にチェックしていき、最終的に各部門に賞が与えられる。
部門は文学一般、学術書・教育図書、実用書、文庫本、芸術書・写真集、児童書・青少年向け図書、教科書、愛蔵書、非市販図書、その他の10グループに推薦図書が加わる。
とくに重要視される、本のコンセプトの評価は、デザインはわかりやすいか、理論、機能、斬新さ、構成は整然として目的に適っているか、テキストと写真の関係、見出し、ノンブル、表題、脚注など。
コンセプトは一貫しているかなど、いかにもドイツ風にカッチリしたデザインポリシーを審査している。

あまりに厳重な審査で堅苦しいように思われるかもしれませんが、選ばれた本はどれもほんとうに「美しい本」ばかり。現在の本を手にとって思うのは、ドイツやヨーロッパの製本技術の歴史の深さ、聖書を始めとする図書への篤い思い入れ、また近代デザインの流れを感じないわけにはいきません。

[2003-2-10(月)]

東京ドイツ文化センター

空木茜
akane8@mx2.ttcn.ne.jp

赤坂見附から青山通りを上がって、草月会館と高橋是清翁記念公園の間の道を奥に入ると、都心を疑う静寂の空間の中に、レンガ造りの東京ドイツ文化センターがある。

東京ドイツ文化センターは、ドイツ政府の委託機関のゲーテ・インスティトウートの東アジア地域代表機関で、ドイツ語教育の助成と日独の国際文化交流の促進のために様々な活動をしている。芸術、文化、社会、自然科学、テクノロジーなど幅広い企画と後援を行っているドイツ関連の機関である。

毎年2月に行われるベルリン国際映画祭の速報が、ポットの新しいサイトで報告されているが、ここのホールでも、映画会が開かれている。いまは、ベルトルト・ブレヒトの映画特集をしている。(03−3584−3201) ベルリン映画祭の過去の作品も上映されることがあるそうだ。

図書館が目的で、初めて訪問したのだがドイツ的?で知的な雰囲気がとても気に入ってしまった。なんといっても静か。
ここの図書館は情報センターでもあり、ドイツへの開かれた窓として最新の情報や資料を提供してくれる。閲覧は誰でも自由。リファレンスも受けられる。
そこで早速、入手できなかった『Ich entdecke die Welt Bibel 』について、専属の司書の方に伺うと、インターネットでドイツのアマゾンへアクセスしてデータをプリントアウトしてくださった。やはり、日本には在庫はなく、ドイツへ注文するしかないようでちょっとめんどう。

帰宅してから自分でも検索したが、この本は旧約・新約聖書の二冊本であることがわかり、表紙のカラー図版も取れた。さすが、インターネット。
 
もうひとつの話題は、このセンターが協力して毎年開かれている『ドイツの最も美しい本展』で、「モリサワ」から始まったものが、今年はご近所のTOPPAN「印刷博物館」で開かれている。(2月16日まで)
“最も美しい本”なんて魅惑的な言葉。一冊、一冊の造本からイラスト、フォーマット、紙質や色づかいなど本作りの厚い伝統を感じさせる。
日本でこのようなコンペティションが開かれる日が来るだろうか。内容と表現の質の高い本は望まれているのかしら?

[2003-2-3(月)]

“非正規”公務員と呼ばれる私たちパートタイマー

空木茜
akane8@mx2.ttcn.ne.jp

 『東京新聞』朝刊2003年1月30日(都下多摩武蔵野版)P8に「失業への不安、給料に大差」の見出しで、自治体非常勤職員についての記事が出ていた。

 ここ数年、パートタイマーの労働問題は自分の問題であり気に留めているが、またか、と思ってしまうのも事実だ。低額労働者は右肩上がりに増え続け、マスコミも積極的に取り上げる。しかし、自分の11年間働いてきたことを振り返っても、改善されてきたという実感はない。むしろ、後退しているんじゃないだろうか。

 この記事を皆さんにも読んでいただきたいが、要旨は、自治体の歳入減に対応して正規職員から、安い賃金ですむパートタイマー(これをなんと呼ぼうが)に置き換え、住民サービスのニーズの増大に応えるというものである。パートは不安定な雇用に、いつもびくびくし、何年たっても1円も上がらない時給や、一方的な労働条件の改悪にいきどおりを感じるが、未組織者はどこへどう言っていいものか悩む。

 最近は民間委託や民営化による解雇の不安もつのる。仕事上の能力も認められず、一般職からきた職員とのはなはだしい賃金差。こういう事態は、正当な労働なんだろうか?

 この記事の中で、注目したのは地方公務員法による非常勤・臨時職員の位置づけで、「法的にあいまいな立場」とされているところだ。そこを、総務省は本格的な業務に就く非常勤職員や、有期雇用の常勤職員を採用できる仕組みをつくり、法的に位置づけようとしているらしい。

 え!ということは私たちは違法で働いているのか。
 全国の市町村立図書館の“非正規”公務員はどんな扱われ方で働いているのだろうか。

 嘱託職員、臨時職員、非常勤職員、再雇用職員、委託先からの派遣、本庁から来たバイトさん、パートさん、リタイアーした先生それからそれから、何がどう違うのか教えて欲しい。

 以前、知り合いが「あんたたちバイトは文房具と同じ消耗品費から支払われている」と聞かされて愕然としたものだ。ここまで、見下されているとは。まさか事実とは思わないが、雇用者(図書館)は、これからの図書館運営の“人“の問題をどのような方向に位置づけたいのか、本音のところがさっぱり見えてこない。

 カウンター業務の現場にいても、参考図書室にいても図書館の仕事はいたって専門的な仕事だと思う。それなのに、これぞスペシャリストと呼ぶにふさわしい人間はいるのかいないのか? 図書館批判の中にかならず、パートのような本のことを知らない素人を使うのは困る、というものが入っている。ならば、有資格の正規職員ですべてかためるのがベストなのだろうか? 予算のために已む無く非常勤を使うのか、私たちはこの矛盾の犠牲の上に立っている。

 『ず・ぼん』8号でも「非常勤職員という待遇とその給料」が特集され、正規職員との能力逆転現象など身近な話題があった。私はこの仕事に就いてから、もちろん自前で司書資格を取った。でもそんなもの飾りにもならないしポイントも付かない。経験年数の価値評価もない。知っていることが多少ともあれば、自分自身の仕事が楽にはなるが。

 また、正規+有資格が必ずしも優れた図書館員とは限らないことも、みな承知である。

 様々な矛盾の中にある公立図書館は、思い切り透明性を高くして、内部で働く人たちにも、市民とも対等に話し合える、開かれた場が必要だと、切に思う。

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