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12月の出来事・考え事

[2002-12-20(金)]

図書館業務の民間委託

空木茜
akane8@mx2.ttcn.ne.jp

今日の午後はひまにまかせて、読書の時間。『本とコンピュータ』2002秋号をパラパラと読んで、先日お目にかかった、堀 渡氏の”図書館の未来はストックとネットワークにあり”を拝見しました。今、各自治体で共通の利用カードで相互利用が進んでいるようですが、広域エリア内のネットワークとコレクションのストックは、資料提供の図書館の重要な任務だと思いました。国や都道府県レベルはなおさらしっかりした資料コレクションを確保して欲しいですね。
ほかに、図書館業務の民間委託の是非も出ていて、無記名なのでどなたが書いたのかわかりませんが、これから盛んになる話題でしょうね。現在でも外部委託している部分が相当あり、それをどんどん拡大して図書館経営のコストダウンを図り、かつ、公益を充実させる・・そんなうまい話があるのかしら? コンビニより安い時給で、長年バイトを使うことが上手な経営とでも思っているのでしょうか?
と、書いてきて12月18日の東京新聞朝刊に江東区立図書館(*)の個人情報を悪用した記事を読みました。TRCの派遣社員ということですが、だから委託が信頼できないという短絡でなく、図書館も住民基本台帳の危惧と同質の危うさを抱えていることを肝に銘ずるべきでしょう。

(*)2003年1月4日に、[誤]豊島区立図書館→[正]江東区立図書館に訂正しました……当コーナー担当・佐藤智砂 sato@pot.co.jp

[2002-12-6(金)]

本への愛着と図書館の蔵書管理

空木茜
akane8@mx2.ttcn.ne.jp

本が好きで本を造っている人は、レイアウトの1ミリのゆがみも気にしている。本が汚れたり、表紙にシールやブッカーが貼られるのもいやだろう。
図書館は蔵書管理をするために蔵書印、バーコード、デートスリップ、所蔵館シール、開架・閉架シール、請求記号シールそれに止めのブッカーをかけて愛書家の息の根を止める。管理するためには仕方の無いことでしょうね。
そんな中でも、少しは遠慮していいのじゃないかしら?
本は中身さえ読めれば良いという人もいるが、私はそうは思わない。物としての本の価値があり、だから本のコレクターだっている。
図書館人と話していると、特に公立の役人を肩に背負っている人は管理的傾向が強い。本に対しても、人に対しても。
それから、コシマキ(帯)は店頭宣伝のために作られたもので、図書館でははずしたほうがいいと思う。コシマキは下部を覆い隠すもので、はずしてしまうと、チョット恥ずかしいかしら?

[2002-12-5(木)]

バーコード、うちの場合

堀 渡
hoori@k9.dion.ne.jp

図書館が蔵書に貼るバーコードラベルは、自分の図書館では、出版社が本のカバーに印刷しているバーコード(いまや、大人の本の場合は、背を左にして、左上のスペースに、たいてい二段で描かれているようになっています)の下の段に覆いかぶせるように、その上に貼っています。

これだと既にある表紙のデザインをそれ以上よごさないですむし、日本の出版物の涙ぐましい特徴である、工夫をこらした帯の宣伝文にバーコードを無神経にかぶせてしまわないですむので、ぼくのいる図書館では大人の本はだいたいそうしています。

ただし、10年くらい前のコンピュータ導入時に、市内の図書館全体で決めた、本の背を左にして左下、1.5センチ×2センチくらいの位置、というのがまだ公的には生き残っているところがあって、帯を取ってしまう習慣の図書館では特にまだそうかな。

しかしそれだと、帯をとろうがとるまいが、背を左にして左側の位置に、本に印刷されたバーコードと合わせて三段の縞模様が、目立ってついてしまいます。いまや図書館でビニールカバーをかける時に帯を取ってしまうのは、極めて間の抜けたデザインになってしまう事が多いし、出版社によって既にほとんど2段のバーコードがつけられている現状では、それにかぶせてしまうのが一番いいと思う。(ただし気をつけないと、貸出し手続きの時、隣接する出版社のバーコードをスキャナーでなぞってしまってエラーになってしまい、二度なぞることになるとカウンター業務では不評の部分もある。)

雑誌の場合は、背を左にして、にぎやかな表紙デザインの中で一番邪魔でない位置に逃げる。絵本もおおまかにはそうかな。けれどものによっては背を右側にした、裏表紙の位置に逃げる、というのはカウンターが忙しいと手間ですよ。表紙が見えるようになる、本の背を左にした面で、なるべく一定の位置に貼る、というのはカウンターの多忙時に対応した知恵です。

なぜ表紙の面かというと、新刊雑誌などは表紙を見せる「面展示」をしていて、<○月○日から借りられます>というラベルも同じ見える面に貼っている。(雑誌・本に限らないが)別に取り置きしてある付録などもある場合、それの表示ラベルも客に見えるように表紙の側に付けている。そして、カウンターで重ねた本のバーコードをなぞりながら気の利いた対応をするためには、表紙の文字がカウンター職員の目に入ったほうがいい。(結構、そういう要素は多いです。関連書はないか、と聞かれたり、こちらから言葉をはさんだり。……アダルトビデオ店などとは逆かもね。)

また実はバーコードの位置の問題を考えるポイントはデザイン以外にもうひとつあって、連続して休館して、書棚に残った在庫のバーコードを、本を少し引き出して全点データ入力し、貸し出し中で既に管理できているデータと重ねあわせて、その時点の行方不明本のデータを見つけ出す「蔵書点検」という結構大変な作業の効率の視点です。本を棚からバーコードを読めるだけ引き出してスキャナーでなぞればいいわけで、背に近い同じ側に貼ってあるのがベターです。違った位置にあると四苦八苦するのです。

自分の館では先々週、休館して5、6人の人員で、3日間で65000冊なぞりましたが、大変です。(1時間一人あたり千数百冊ペースでした。そんなに長いこと休めないし、緊張しつつスピードをあげて機械的に量をこなすしかないタイプの仕事です。)ばらばらな位置にあると効率が悪いし、裏面にあったりするとミスをしやすいのです。)

いま開館しつつその後始末をしています。たぶん盗まれたのでしょうが、打ち出された「不明本リスト」から選び直して発注したり、未入力なまま棚にあった本を入力したり、データ内容や書架の位置を直したほうがいい本を訂正したり、修理したり。行方不明率は2〜3%程度でしたが、このごろ書架がすいているなあ、とみなで言っていた岩波文庫の水滸伝や西遊記(どれも十数巻ある)などがやっぱりとられていた。絵本や雑誌などに多いバーコード貼付位置の移動は、そうした効率を(別の価値視点から)我慢しているわけです。その我慢は当然だと思いますけど。

ただし実際には蔵書点検をしていないとか、カウンターが込んでいなければ、単純なデザイン重視でいいんでしょうけど。(でも「対話」にはハンデだな。)

またもうひとつ、大事な前提は、バーコードを貼るのが図書館の中でやるのか、本の注文を受けた本屋が納品まえにやってきてしまうのか、という視点です。これは背中の分類ラベルの貼る位置や、表紙カバーの貼り方(表紙の裏側が読めるようにカバーの折り返しを切ってしまうとか、帯をはずして表紙デザイン自体を全面見せたほうがいいか、とか)にもつながってきますが。自分の図書館では、書店には何もしないで注文図書を納品してもらい、職員のデータ入力(バーコードや背のラベルは職員がこの段階で貼付する。カバーの貼り方、帯の処理もここで指示)後、館内の隣室でアルバイトの人に貼ってもらっています。バイトのほうから、こういう貼り方でいいのか?という確認も多いです。カバーの背中まで遊びがある絵本もあるし、折り返しと表紙の裏と両方生かすしかない本もあります。できるだけ素材の本のもっている情報は生かそうとします。一方で、僕自身は「こりすぎには疑問」なのですが。本を長持ちさせ、大量に動かすのがいまの図書館の基本状況なので。
外部委託だと、一括の仕様書といった機械的な指示しかできないのではないでしょうか。コストは安いのでしょうが。

一冊一冊の蔵書のバーコードラベルの扱いひとつとっても、「図書館というのはある面、不自由だが、奥が深い」「事情が透けて見える」のかも知れませんね。
事情を整理分析するきっかけにはなりました。ご質問ありがとう。

[2002-12-4(水)]

図書館のバーコードどこに貼る

空木茜
akane8@mx2.ttcn.ne.jp

本日は、図書館の本に貼ってあるバーコードについて「ず・ぼん」編集者の方々のご意見をお聞きしたくメールしました。
私の結論を先に言いますと、バーコードの貼る位置で表紙の価値を損ねないようにして欲しいと図書館に言いたいのです。このタックは、バーコードで読み取るシステムが出来てから、表紙にべたべたと貼られるようになってしまったもので、本来の出版者から見ればじゃまなものです。デザイナーもいやがっています。
もはやコンピュータ抜きには動かない図書館システムですから(いまのところ)このじゃまものを貼るしか手が無いのでしょうが将来別の方式が出てくるかもしれませんし、ICタグも開発されたそうです(「新文化」2002.11.14)
現状の中で、少しでも改善できるのではないでしょうか。なぜ、こだわっているかと言えば・・・ある日この事で意見を言いましたら、「(陰の声 アルバイトの分際で)余計なことを言わなくて良い」とお叱りを受けました。納得いかないので、市長への意見メールを出したところ、1ヶ月も経ってから返事があり、要約すると・・一定の場所に貼り処理を迅速にする。絵本などの場合移動することもある。ご理解いただきたい。・・というものでした。
このバーコード位置は、日図協などで基準が示されているのでしょうか?どういう理屈なんでしょうか?
私のいる図書館では、地から2?、ノドから3cmで、とじが左と決められています。これは、縦組みの本や雑誌はあまり問題ないのですが、横組み本は表1になり、写真や必要なメッセージを隠してしまうことが多くあります。もちろん、デザイン上美しくありません。そのことで、影響ないところに貼ったらと言いましたら前のようなことになったわけです。
それ以来、他市の図書館も気をつけて見るようになりました。先日、新潟県長岡市立図書館に寄りましたので、バーコードの位置を見ましたところ、こういう方法もあるのかと、感心し、わが意を得たとの思いでした。すべての本の表4にあたる、つまり裏表紙の中央の下から2〜3cmの場所に貼ってあったのです。この場所ですと、わりあい影響の無い無地の地帯です。それにバーコード・タックも小さかったようですし、背表の請求記号も小さくてよかったです。
改善しようと思えば出来ることを、なぜしないのか、不思議でしょうがありません。職員は自分の体面ばかりで、臨時の意見など聴く耳を持たないのでしょう。民間企業と大違い。(民間にもいろいろですが)
図書は市民のものです。職員の物ではありません。間違えてもらっては困ります。図書館あり方委員会というものがあり、市民の意見の中にやはり私と同じように、バーコードやデイトスリップの無神経さを強く批判している方がおられました。やっぱりそうですよね、と共感しました。
作業を迅速にということですが、貸し出し業務はバイトがほとんどしていて、スキャナー読み取りの時本は揃っていないので、結局読み取り時にいちいち揃えてから、バーコードでなぞるわけです。職員は事務室にばかりいて現場感覚が薄い。
現状での提案は長岡方式がベターだと思います。
蔵書点検点検時に煩雑になるという意見もありますが、それは内部作業の問題で、利用者優先の立場からは、本の美観と情報を損ねるべきではないでしょう。ICタグが広く実用化されれば、その問題も解決するでしょうし。
思うままに書きましたが、皆様のご意見をうかがい私の考えを再考したいとおもいます。どうぞよろしく。

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