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[第17章●よくわかる十干十二支] 1… よくわかる十干十二支 1 |
[2006.03.19登録] |
石田豊 |
年号(「年号と西暦」参照)以上にわかりにくくなっているのが十干十二支です。十二支のほうはまだしも、とぼくは思ってきたんですが、最近の若い人はそれすらも怪しくなっているとの由。ナニドシ生まれ? と聞いても、知らない人が増えているそうです。でも年末年始にはエトの話題がテレビ新聞雑誌でよくでてきますし、年賀状にもエトの動物を配したものが今なお多いってことは、どういうことでしょう。おそらく単にお正月の動物キャラであるにすぎないのかもしれません。 いまや、一般教養としては完全に滅びてしまったかに見える十干十二支ですが、じつは、そう難しい概念でもありませんし、記憶や計算にもコツがあります。これをマスターしてしまうと、落語や時代小説は今まで以上にウンと楽しめますし、歴史の本を読む場合にもとても大きな武器になります。受験生の皆様には、忘れてしまった年号を「計算で導きだす」というような荒技につながることすらあります。 十干十二支とは何か。 歴史の時間に習ったので、こういうのがありましたね。 壬申の乱(じんしんのらん):天智系と天武系の戦争 辛亥革命(しんがいかくめい):清を倒し中華民国を成立させた革命 戊辰戦争(ぼしんせんそう):幕末の新政府軍対幕府派との戦争 言葉だけでも覚えてらっしゃると思う。この「壬申」とか「辛亥」「戊辰」とかは十干十二支で表わした年を示します。壬申の年に(あるいは辛亥、戊辰の年に)起こった乱(革命、戦争)だから、こう呼ぶわけです。他にもいろいろありました。 また、今年40歳になられる方や、その前後の人は「ヒノエウマ」という言葉に敏感でしょう。ひのえうま生まれの女は夫を食い殺すという俗信があり、そのため昭和41(1966)年はガクンと出生率が落ちたのでありました。この「ひのえうま」漢字で書くと「丙午」もまたこの年を十干十二支で言い表したものです。 十干十二支をつづめて「干支」と言います。読みは「かんし」です。「えと」と読む場合もあります。これを訓読みと見なすのは、ちょっとナンです。あてよみ、と言っておいた方がいいかも。今年のエトはウマとかというけど、ほんとは丙午のように「ヒノエ」とかがついてはじめて、ほんとは「エト」であるわけです。 十干とは「甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸」、十二支は「子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥」。この両者を組み合わせて、たとえば「甲子」というふうにすることで干支ができあがり。年や日にこれをつけることで、その年や日を表わします。ちなみに甲子園球場は(よく言われるように)「甲子」の年にできたので、この名があります。 じゃあ、甲子園球場ができたのは何年? ふっふっふ。それは本稿を最後までお読みいただくと、どなたにも簡単な「計算」でもって導きだすことができるようになります。甲子園球場の年だけじゃなく、西暦何年といわれたら、即座に(はチト大袈裟か)に「ああ、辛酉の年ね」とカマすことができるようになります。ね、少しソソるでしょ。 そのためには、基本的なことを少しだけ暗記していただかなければなりません。十干の並びと読み、十二支の並びと読み、五行説の基礎の3項目です。戦前生まれの人はこの全てを常識としてほぼご存知でしょう。十二支については音読みはともかく、訓読みをぜんぶそらんじている方は少なくないと思います。残念ながら3項目全部にわたって何も知らんという方は、少し頑張ってもらわねばならん。といっても、そう難しいものではないです。 では。 最初は十二支から。ネ・ウシ・トラ・ウ……というのをすっかり覚えていない人がいる。これは私には衝撃でありました。ウッソー、という感じ。いえ、べつに軽侮の心で申しておるのではありません。ま、時代の変遷に驚いているわけです。私も(当然)「神武・綏靖・安寧・懿徳……」なんて暗記しとりませんしね。 しかたないですから、覚えてください。 ネ(ねずみ)・ウシ・トラ・ウ(うさぎ)・タツ・ミ(へび)・ウマ・ヒツジ・サル・トリ・イヌ・イ(いのしし) です。カタカナ部分をお経のようになんども反復すれば覚えられます。十二支に動物を配したことにお怒りの方もあるようです(たとえば細木和子)が、こりゃすげえ発明だと思いますね。イメージがしっかりして覚えやすい。 つづいてこの漢字表記です。 子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥 漢字は動物とはそもそも無関係ですな。卯、辰、巳はウ、タツ、ミと読むのが自然ですが、他のはムリっぽい。丑松、寅次郎なんかの人名で丑、寅はなんとかなっても、申酉なんかは困りますね。ま、しかたないです。申し訳ないが覚えていただく。 ここまでは「手持ちの知識」で十分OKという人は今でも多数派でありましょう。しかし、音読みとなると、どうか。ちょっとキビしいという人も多くなるかもしれません。 子=シ、丑=チュウ、寅=イン、卯=ボウ、辰=シン、巳=シ、午=ゴ、未=ビ、申=シン、酉=ユウ、戌=ジュツ、亥=ガイ 中には音読みとして当たり前のものもありますが、読めんぜというのもかなりあります。漢字は「同じ部品を使っている文字は同じ読み」という性質があります。同じ音を表わす「部品」を声符といいます。音読みがキビしい文字は声符を考え合わせれば理解が早いかもしれません。 子が「シ」。これは問題ないでしょう。君子、孔子、子弟、子女。みんなシです。丑が「チュウ」。これはシンドイですね。丑は干支以外に使用法がない文字ですんで。でも紐とするとどうか。紐帯などと言うではありませんか。チュウ。「ネズミのあとにウシがきてチュウ」(……、無理っぽいな)。寅がエンも厳しい。演劇の「演」がちょっとなまって「イン」……、インゲキ。 卯がボウっていうのは、貿易の「貿」で覚えるといいかも。今の活字では少し違いますが、貿は「卯」+「貝」です。「昴」という字が「ボウ」と読むということを知っている人もあるでしょう。 辰の「シン」は振、唇、娠の声符が辰ですんで、これはOKでしょう。巳が「シ」なのは「合祀」の「祀」。午の「ゴ」は午前午後でおなじみのとおり。未は未然、未来で「ミ」だろ、とのご指摘はごもっともながら、ここは「ビ」ということで、なんとか。 申が「シン」は上申、申告で、こりゃまあ、当たり前。辰と申がどっちも「シン」だというのは、日本語の発音が中国語よりずいぶんシンプルなのでしょうがない。もちろん、もともとは別の音だそうです。酉が「ユウ」というのもナンですけど、ここは「猶予」の「猶」で無理矢理納得していただく。 戌=「ジュツ」はこのまま覚えていただくしかない。それしか思いつきません。中国史ファンには「戊戌政変」で何とかなるかも。亥の「ガイ」は声符的に該当の該、弾劾の劾、骸骨の骸でいってもいいし、辛亥革命のガイね、と覚えてもいいでしょう。 子=シ、丑=チュウ、寅=イン、卯=ボウ、辰=シン、巳=シ、午=ゴ、未=ビ、申=シン、酉=ユウ、戌=ジュツ、亥=ガイ この読みをおぼえておくと十干十二支世界はウンと広がります。 この十二支が毎年順番に移り変わって行く。今年(2006年)は戌年です。イヌの写真があしらわれた年賀状をイヤというほど受け取られたことと思います。去年はトリ、来年はイノシシ、再来年はネズミにというふうに移っていきます。 以上で十干十二支理解の3大要素のひとつ「十二支の並びと読み」はマスター。残すはあとふたつ。長くなったので、今回、これまで。 |
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yuukou.isikawaさんより [2006-08-29] |
助かりました 一般に、契約の当事者を甲、乙、丙と表し、氏名を併記し、ハンコを押して契約書を取り交わします。今回、実務上、六者で土地の貸借契約締結する予定があり、さて、甲、乙、丙位まではよく見るのですが、そのあとは解説にありますように、「丁」で止まっていました。十二支十干も判っていたつもりですが、「読み」も自信がありませんでしたので参考にさせていただきました。 ありがとうございました。 因みに、契約の予定は、地上デジタル放送の中継所の借地に関わるもので、先端技術と古代中国から続いている「漢字」や「思想」との組み合わせも「妙」な感じがします。 |
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