2007-05-13

田中康夫「新党日本」代表が参院比例区から出馬か 旋風巻き起こす可能性も

_12_0144.jpg

日刊ベリタ』に【田中康夫「新党日本」代表が参院比例区から出馬か 旋風巻き起こす可能性も】というタイトルの記事を執筆しましたので転載します。

【リード】
 参院選まで3ヶ月をきって各党が選挙本番ムードになるなか、田中康夫「新党日本」代表の動向に注目が集まっている。田中氏といえば長野県知事時代に、「脱ダム」宣言を発表したり記者クラブ制度を廃止したり、2003年総選挙では政権交代を目指す民主党に全面協力したり、斬新な県政改革を実行するなどして、常に注目を集めてきた。同党は低迷状態ながら、田中氏の周辺を取材すると、参院選への出馬は間違いなさそうだ。立候補すれば、15年前に細川護煕・元熊本県知事が率いた「日本新党」と同じように、無党派層からの大量得票の可能性もあるとの見方もある。 
 
【本文】

◆離党者が相次ぎ党勢は低迷 
 
 新党日本は、郵政民営化に反対して自由民主党から離党した滝実・衆院議員や、小林興起・前衆院議員、青山丘・前衆院議員、荒井広幸・参院議員が田中康夫・長野県知事(当時)を党首に担いで2005年8月11日に結成した。田中氏が2006年8月に県知事選で落選した後も、田中氏が党代表を務めている。 
 
 参院議員1名、衆院議員1名の小政党故に、新党日本がメディアでとりあげられることはほとんどなく、いまや忘れられた存在になっている。離党者が相次ぎ、党勢も低迷している。2006年5月に、元文部副大臣で党副代表の青山丘・前衆議院議員と元文部副大臣の宮本一三・元衆議院議員が同党を離れ、「国民新党」へ入党した。両氏とも今夏の参院選で比例区から国民新党・公認で出馬することが決まっている。2006年10月31日には党の顔の1人で同党の「代表代行」という要職にあった小林興起氏が離党し、国民新党へ入党した。小林氏は今夏の参院選で国民新党・公認で東京選挙区から出馬することを検討している。 
 
 結成時には新党日本を「兄弟グループ」だと国民新党の綿貫民輔・代表が表現し、衆院選後は国民新党と新党日本の衆院議員が鈴木宗男・衆院議員を加えて衆参両院で統一会派を組むなど、両党は蜜月関係にあった。 
 
 しかし、2006年9月、参議院の首班指名選挙で「新党日本」幹事長の荒井広幸・参院議員が安部晋三・首相に投票したことにより、両党の関係は崩壊する。「反自民」を鮮明にする国民新党の議員らは激怒し、荒井氏の処罰を求めたが、田中康夫氏はこれを拒否した。その結果、両党による衆参両院の統一会派は解消された。両党は現在、まったく交流がなく、疎遠になっている。 
 
 「参院選の前哨戦」と位置づけ、各党が総力戦で臨んだ統一地方選挙では、国民新党も公認・推薦候補を日本全国で擁立して戦った。一方、新党日本は公認候補・推薦候補を1人も立てず、同選挙に参加しなかった。 
 
◆東京から出馬の可能性も 
 
 離党者が相次ぎ、党の低迷がささやかれながらも、1人、意気軒昂なのが田中康夫・代表だ。田中氏は講演で全国行脚する傍ら、時間を見つけては党の街宣車に乗って関東圏内を遊説して回っている。どの地域でも田中氏が現れるとすぐに人だかりができ、田中氏自らがボランティアと共に、A4サイズで4ページの「新党日本News」第1号を手渡ししていく。田中氏の真剣な表情を表紙に載せ、「おかしいことは、おかしいと言う。」という吹き出しのついたチラシは好評で、第2号も6月に発行される予定だ。 
 
 参院選まで3ヶ月をきり、田中氏の出方に各党の関心が集まっている。田中氏の周辺を取材すると、参院選への準備を着々と進めているという。同氏が注目を集める理由を政治アナリストが説明する。 
 「知名度が抜群ですし、借金を減らし、県財政を立て直すなど、田中氏の手腕は全国で評価されている。田中氏にはブームを起こす潜在的な力がある。」 
 
 周辺取材したかぎり、田中氏が参院選に出るのはほぼ間違いない。関心が集まるのはどこから出るかだ。田中氏の知名度と2005年で同党が得た票数から換算すれば、比例区で1~3議席、獲得できる。田中氏を前面に出して比例区に臨むことが選択肢の1つとしてある。 
 
 もう1つの選択肢が東京選挙区から出馬することだ。同選挙区はこれまで改選定員が4名だったのが1名増えて5人になり、無所属候補にも当選の目が出てきた。無党派層が多く、田中氏は都市部での人気が高いことから、東京出馬説もあながち、否定できない。今夏の参院選で東京選挙区から無所属で出馬する川田龍平氏の陣営は、田中氏の出馬を警戒する。 
 
 「龍平さんのターゲットは無党派層。無党派に人気の高い田中さんが出れば、票を食い合うことになる。それに、田中さんも龍平さんも憲法の尊重では一致しているように、2人の類似点は多い。田中さんが出たら、龍平さんはかなり苦戦することになる」。

 川田選対のスタッフはそう本音を漏らす。 
 
◆「新党日本」は一大ブームを起こせるか?
  いったい、田中氏はどのような決断を下すのか。田中氏をよく知る知人はこう語る。 
 「リーダーたるもの、『冷徹』にならなければならない時もある。長年、友人関係にある龍平さんを不利な状況に追い込むことになるにしても、東京から出るのが最良の選択だと田中さんが判断すれば、都内から出ることもある。ただ、全国に熱烈なファンがいますから、比例区に回ったほうがいいと思いますよ。田中さんも比例から出るつもりなんじゃないかなぁ?」 
 
 田中氏が比例区から出馬するとどうなるのか。センセーションを巻き起こせるだろうか。前出のアナリストは、熊本県知事を辞した細川護煕・元首相が代表(当時)を務める「日本新党」(いまは解党)旋風が起きた1992年参院選との類似点を指摘する。 
 「結党から2ヶ月しかたっていない日本新党が比例区では、日本共産党や民社党といった既成政党の得票を上回る361万72463票(7.73%)を得て、4議席獲得しました。そのとき名簿2位で初当選したのが、小池百合子・前環境相です。この選挙で日本新党が躍進した背景には、有権者による既成政党への飽き・不満・不信があった。安部晋三・自民党の人気が下がっても、民主党の支持率が高まるわけではない。2大政党制の閉塞感が日本を覆っています。新党が旋風を起こす要素は十分にあります。田中康夫さんはメディア戦略に長けた方ですから、巧みな選挙運動で無党派層から大量得票する可能性もある。『新党日本』が『日本新党』の再現となるわけです(笑)」 
 
 風雲児・田中康夫氏と新党日本は一体何を起こすこすのか。その動向に全国の注目が集まる。