2007-08-07

田中康夫、初登院インタビュー 注目の新人参院議員が語る

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オーマイニュース』に次のような記事を執筆しましたので、転載いたします。

タイトル:田中康夫、初登院インタビュー
サブ・タイトル:注目の新人参院議員が語る

【本文】
 今回の参議院選挙で初当選した「新党日本」代表の田中康夫・前長野県知事。初登院の直前に、私は独占取材することができた。以下、インタビュー内容を紹介する。

元祖「年金通帳」を主張

――今回の参院選は「年金」選挙といわれましたね。

田中:いま必要なのは、社会保険庁改革ではなく、年金制度改革です。新党日本は、2年前に政党として初めて年金通帳の導入を提案した政党です。

――「新党日本」が提唱する年金制度改革はどのようなものでしょうか。

田中:現在の年金手帳には、加入年月日しか記されていません。一体、何歳からいくらもらえるのか、明記されていません。これに対し、毎月の積立実績と将来の支給金額を明確に印字し、国民と国家が信頼の契約を結ぶのが「年金通帳」です。

 民主党や社民党など他党も「年金通帳」を提案するようになりましたが、「年金見込額」なる何の保証もない金額を印字するというだけです。「新党日本」が提案する年金通帳は、預けた金額を1カ月単位で印字するだけでなく、毎年度末には給付率1.7倍で計算した国費支給分をプラスして、給付開始後に毎月確実にもらえる合計金額を印字する独自方式です。

――そこまで詳細に記すのは何故ですか。

田中:7年前、「100年安心年金」の惹句を掲げた政府は、現役時代の月給の6割支給を約束しました。ところが、わずか4年後には、5割保証へと後退しています。このような政府の対応が国民の年金不信を強めることになっています。

 毎年度末に支給額を確定していく新党日本方式の年金通帳の導入は、帳簿上では150兆円にも達する積立金が果たしていくら残っているのか、一向に明かそうとしない政府に対し、その公表を迫る役目を果たすのです。 根拠のない「年金見込額」では国民の年金不信を払拭できません。

 年金積立金は、旧国鉄や旧道路公団をはじめとする、資金回収が不可能となった特殊法人へも投じられてきている事実から目を逸(そ)らしてはいけません。財政投融資という垂れ流しの構図を抜本的に改めねば、問題先送りに過ぎないのです。

――安倍首相は社会保険庁改革で年金の問題は解決したかのように繰り返しています。

田中:今回の社会保険庁改革関連法の国民年金法74条には、掛け金を年金の教育・広報に用いる、と新たに明記されました。「関連」や「等」の字句を条文に忍び込ませて、際限なき拡大解釈と無駄遣いを可能にしていくのが、日本の「官僚政治」の常套(じょうとう)手段です。

  例えば、京都駅前に豪華な年金お抹茶サロンを設けて、老人に無料でお茶を出し、若者にも無料で観光案内を行い、年金未納者を減らす教育・広報を行う。日本の官僚は早晩、このような事業を開始し、税金や積立金の垂れ流しを行う集団なのです。

 社会保険庁を日本年金機構へと看板を付け替えても、官僚の焼け太りです。非公務員化という言葉とは裏腹に、職員の給与は税金から支給されるのです。私が知事時代に全国知事会の委員長として調査したところ、独立行政法人の給与は国家公務員の給与よりも平均10%近く高く設定されていることが明らかになりました。

  しかも、日本年金機構への名称変更を規定する今回の法改正では、内部統制や監査の在り方に関して、これっぽっちも記されていないのです。解体、廃止といった言葉だけが踊るだけで、単なる看板の付け替えに過ぎません。官僚主義は安泰なのです。

「有意識」な人が私たちに投票した

――今回の参院選挙の結果をどう見ていますか?

田中:私たち「新党日本」はたいへん小さな所帯で、組織などほとんどないのにも関わらず、177万0707(3.01%)もの票を獲得しました。これは国民新党の126万9209(2.15%)票を上回るものです。東京では社民党より2万票余り上回りました。

――どのような選挙運動を展開したのですか。

田中:長野県知事選に出馬した時と変わらず、ウグイス嬢も雇わず、私がずっとマイクを握り、街宣車から有権者に訴えるという手法を貫きました。おそらく、選挙期間中に最も長く話した候補者じゃないですか。ギネス・クラス級だと思いますよ。

――反応はどうでしたか?

田中:動員もないのに、都市部ではどこでも演説を始めるとすぐに人だかりができました。サラリーマン層が15分聞いて、わが党の「新しい日本宣言」(マニフェスト)を受け取りました。そのとき、「自民党はダメだよな。でも、民主党の比例名簿を見ると、多くが組合に守られた連中じゃないか」という声をよく聴きました。

 聞いてくれた人たちだって大きな会社に勤めているのかも知れない。皆が所属している場所に頼るのでなく、良い意味で「無所属の時間」を、家庭や地域、会社において過ごす人たちが「新党日本」に入れてくれたのだと思います。

 あと、「わかりやすさ」もあります。「テレビでおまえのいっていることが一番しっかりしている」という声をよく聴きました。「わかりやすい=単純=中身がない」ではなく、「中身があって分かりやすい」プレゼンテーション能力を私は持ち合わせていたのだと思います。「新党日本」に入れた3.01%の人は極めて「有意識」な、特定の支持政党無しの人たちだったのだと思います。

「WHY」「HOW」を問うべき

――安倍首相の選挙戦をどう思いましたか?

田中:安倍首相は「改革はとめられない」といいましたが、改革の中身が違うのです。教育基本法を変えたら教育がバラ色になるわけがないように、形だけ変えても仕方がない。オツムの中身を変えなければなく、オツムの中身を変えた教育や教員でなければいけない。5W1Hの4Wだけを教えるのでなく、「WHY」(なぜ)、「HOW」(どのように)を考えさせる教育にしなければいけない。

 そのために制度がどうあるべきか……が問われるのに、制度さえ変われば良いというのはハコモノさえできればウチの街は千客万来といっていた思考と変わりません。高速道路のせいで通りすがりの街になり、子ども達も出ていって、ハコモノのせいで街は廃れたという現状がある。この国の「形」ではなく、「あり方」が問われているのです。「WHY」や「HOW」を自分で考え、自分でいえる人でなければならない。

 それをしないできた戦後62年のツケがあるわけです。日教組や文部科学省が進めてきた「WHY」「HOW」を問わない教育で量産された人たちが、2005年の総選挙で小泉自民党に入れ、今回、少しは民主党に入れた。

「他党の背後には大きな組織がいる」

――しかし、少なからぬ人が「新党日本」に投票したわけですよね。

田中:参議院のコインの表側は自民党の青木幹雄・参院議員という既得権益の象徴のような人ですが、コインの裏側は民主党の組合に守られた人たちです。それじゃ、同じじゃん、イケナイよと考えた人が「新党日本」に入れたんだと思います。

 私が長野県知事だった頃に、財政破綻寸前だから給料を下げさせてくれと50時間、徹夜で組合と交渉しました。しかし、組合の人たちは同じ職場で働きながら、臨時職員の待遇改善の話はしませんでした。自分たちのことしか考えていないのです。2割の組織化率の組合が労働者の代表であるわけがない。自分を支援してくれた人、票を入れてくれた人だけではなく、政治はすべての人のためにこそより良い社会にしないといけないわけでしょう。それができていないというのが既存の6つの政党です。

 投票日直前のテレビ討論で、私が、「他の皆さんは背後の大きな組織の都合で動くから、総論では大層なことをいっても、各論では腰くだけで、そのつど、『裏切られた』と特定の支持政党のない人たちは思われてきたのではないですか? 背後の組織のためにやってきたから、みなさんの政党はいずれも、逮捕者がいるんじゃないですか?」と問いました。「そんなこと、テレビで言うなよ」という顔を民主党の枝野幸男氏はされて、「そんなことはありません」と社民党の阿部知子氏は否定されましたけどね。

 田中康夫は「永田町は裸の王様だ」といっているわけです。しかし、長野県知事としてやってきたように、口だけでなく、処方箋も私は提示します。スクープのネタを出すだけでなく、提言もしっかりするということです。

 私たちは政治の実態を映し出す内視鏡のような存在です。内視鏡のレンズが小泉純一郎のいう鈍感力で曇っていて見えず、内視鏡に腫瘍がうつっていても「これがバレたらパンドラの箱になる」といってだまっていた。これまではそういう政治家ばっかりだった。「情報公開」「説明責任」なんて当たり前の話なんですよ。

 安倍首相が「改革はとめてはならない」というけど、日本をよりよくしていこうとするのは、左右上下斜め問わず、みんな一致しているんですよ。私は、今までの人が馴れ合いやしがらみがあっていわなかったことを、ちゃんという。みんなにインフォームド・コンセントするだけでなく、インフォームド・チョイスできるように、こういう風に変えていきましょうと提示しているんです。私は公共事業のような「造る」でなく、創造の「創」を創るためにやっている。

民主・国民新党・新党日本・無所属との共同会派結成?

――抽選で国土交通委員会に所属することになりましたが、感想を一言。

田中:天の采配ですね。ダムから観光、気象までやります。ムダな公共事業を他の委員を連れて視察に行きますよ。行かないといえば、質問趣意書を出して、「何で見に行かないんだ」と追求しますよ。

――会派はどうするつもりですか。

田中:小沢一郎「民主党」代表としては、民主党・国民新党・新党日本・無所属で会派をつくる予定です。決して、新党日本が民主党に組み込まれる話ではありません。対等の関係で、3党で会派をつくる話があります。