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ポット出版
立ち読みコーナー●60分ロマンス
[2004-07-23]
60分ロマンス

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60分ロマンス
風俗ゼミナール 体験編
[2004.07.23刊行]
著●松沢呉一

定価●1700円+税
ISBN4-939015-67-X C0095
四六判/244ページ/並製
印刷・製本●株式会社シナノ
ブックデザイン●沢辺均/山田信也/斎藤美紀

在庫有


【立ち読みコーナー】※本書所収原稿の一部を紹介

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淫乱変態娘


「エッチ大好き」なんて堂々と言う風俗嬢がよくいます。ちゅうか、「エッチは嫌い」と言う風俗嬢の方がずっと少ないものです。客受けがいいためにそんなことを言っているわけでもなくて、風俗嬢に限らず、たいていの人間はスケベが好きなものです。でも、中には「淫乱」と言うしかないくらいに好き者っているんですよね、これは年に一人出会えるかどうかの稀有なエロ娘との体験談です。

 よく聞く話だが、講習の際に、服を脱いだら、興奮のあまり下着にシミがつくくらいに濡れていて、肌が触れるだけでいちいち声を出して講習にならないのがいる。エロ雑誌の撮影でも、からみでもないのに下着にシミが滲んできて、ニオイまで漂うことがある。人前で足を開くだけで欲情してしまうのである。いたって健全なことだ。
 そのくらいスケベな方が風俗嬢向きとは言えるのだが、講習でチンコを入れたがるのもいて、ヘルスやイメクラだと本番されても困るので、「ソープに行った方がいいんじゃないか」なんて店が勧めることまであると聞く。自分の快楽に没頭すると、客のことを忘れてしまったり、客が退くこともあるため、適度にスケベで、かつ自分でコントロールできる方が風俗嬢には向いているのだ。
 実際、そういう淫乱タイプに客として出くわすことがあって、いやらしいのが大好きな私でも、すごすぎて困ることがある。
 仲のいい店の店長から、「期待の新人が入った」と連絡があった。
「今日面接したばかりなんですけど、Tちゃんクラスの美形ですよ。僕の経験上、あの子は人気が出るでしょう。今度遊びに来てくださいよ」
 Tちゃんとは何度も会っているが、性的に言えば私の好みではなかったため、一度も遊んだことはない。しかし、彼女のようなクールでコケティッシュなタイプを好きな男が多いことは十分に理解でき、事実、数カ月前までこの店のナンバーワンだったのだが、現在は別の店で働いている。
 その電話があった翌日、仕事のついでにその店に寄って、期待の新人Mちゃんの写真を見せてもらった。なるほど、はっきりとした目鼻立ちをした美人さんである。ほっそりとしたネコ系の顔で、Tちゃんに似ているというのもわかるんだが、私はTちゃんよりもこっちの子のがずっと好き。キツそうにも見えるのだが、私はキツめの顔が好きである。
「明日初出勤なので、遊んでやってくださいよ」
 そう言われて、翌日、そそくさと出かけていった私である。
「Mさんです」と従業員がカーテンをあけると、Mちゃんが緊張の面持ちで待ちかまえていた。
 実物は写真ほどの美人ではなかったのだが、目が大きく、広く万人に受ける顔をしている。また、スリムでスタイルがよく、体に魅惑される客も多そうだ。
 彼女は個室に入ってすぐに私の服を脱がせようとする。「まあまあ、落ち着きなさい」と言って彼女の肩を抱いて、一緒にベッドに腰掛けた。
 彼女は正真正銘の十九歳で、昼間は別の仕事をしているという。
「風俗嬢になりきるのは抵抗があるし、金銭感覚が狂うのもイヤなので、もうひとつの仕事は続けたいんです。だから、週に一回か二回しか店には出られません」
 殊勝な心がけだ。そう言いながらも、三カ月ほどすれば風俗専業になったりするのも多いわけだが。
 初日とあって、体も表情もこわばっていることが見てとれる。私はよくそうするように、着衣のままで後ろから体を抱き締めて、話を聞き続けた。緊張をほぐしてやるためだ。どうして後ろからかというと、人間は正面からだと体が警戒する。特にこういう新人さんはガードしようとする意識が働くため、後ろから抱き締めた方がリラックスできるんである。
 その効果が表れてか、彼女は滑らかに自分の事情を語り始めた。
「借金があるとか、そういうことじゃないんです。本当に前々から風俗には興味があって、一度やってみたいと思っていたんです」
「どんなことをするんだろうって?」
「そうですね。よく歌舞伎町には来るので、お店の看板を見て、想像を膨らませてました。そういう本も読んでいるうちに、好奇心がどんどん強くなってしまって」
 そんなことを言いながら、彼女は膝頭をこすり合わせている。もう感じ始めているみたい。しかし、体の反応を悟られないようにしているのか、事務的とも言える口調で話を続けている。
「この店の前にも、四軒、面接に行っているんですよ。でも、二軒は面接してくれた人がイヤなカンジだったので、こっちから断りました。あと二軒はあちらから断ってきました」
 なんでこれだけの素材を蹴るかな。
「たぶんこれじゃないですか」
 彼女は足を伸ばしてコスチュームのスカートをたくし上げ、「これ」を示した。太股の外側にくっきりと縫い痕がある。交通事故によるものだそうだ。
「だから、泳ぎに行けないし、濃い色のストッキングをはかないと、ミニははけないんです」
 しかし、それだけで嫌がる客がそういるとは思えない。
「一軒は背が高すぎるって言われました」
 彼女の身長は一七〇センチもある。しかし、背が低めのロリ系を集めた店じゃない限り、スラリとした彼女のスタイルはプラスになってもマイナスになることはまずないだろう。
 彼女はオッパイが小さめだが、これも巨乳系の店じゃない限り断る理由にはならず、彼女のスレンダーさには小さめのオッパイがよく似合う。
 週に一、二回しか出勤できないことを敬遠する店はあるだろうが、だったらはっきりその旨を言ってもよさそうなもんだ。何か別に理由があったんだろうか。
 しかし、それ以上、詮索しようもなくて、この問題は「なんでだろう」と謎のままで終わった。
「アルバイト気分でできると思っていたんですけど、いざやってみると、この仕事は大変ですよね」
「まあね。楽してお金は稼げないよ。でも、すぐに慣れるよ。少しは落ち着いた?」
「まだまだ緊張してます」
 聞けば私が四人目の客で、これがラストだという。
「今日は講習をして、そのままお客さんについたんですよ。疲れてしまったので、これで帰らせてもらいます」
 本当は夜の十二時までだが、一時間ほど早くあがることにしたらしい。
「だったら、最後の力を振り絞って、頑張ろう」
「ハイ!」と彼女は元気に返事をする。
「オレは攻め派だから、リラックスして寝てていいよ」
「えー、攻めが好きなんですか?」
「そうだよ。そんなに驚かなくてもいいだろ」
「でも、こういう店って、そういう人ってあんまりいないんじゃないんですか」
 この店はオーソドックスなヘルスだから、攻め好きは少ないのだ。
「今までのお客さんもそんなに攻めなかったですよ」
「そうか。イヤか、攻められるのは」
「イヤじゃないです。でも、すごく感じやすいので、恥ずかしいんです」
 内股を撫でると、彼女はゆっくり足を広げて、今度は腰をクネクネと動かし始めた。
「今日はもうイッた?」
「イカないですよ。だって、今まで、オナニー以外でイッたことなんてないです」
「ナニ? だったらイッてもらおうかな」
「えー、たぶん無理だと思うけど。だって、今までつきあっていた人は誰もイカせることができなかったんですよ。セックスしても絶対イカないです」
 私の手は制服の中に潜り込み、ブラの中の乳首に達していた。
「感じちゃいますよー」
 彼女は冗談めかしてそう言ったのだが、その直後、彼女は乳房に伸びる腕をつかんでのけぞり、私の肩に頭部を乗せた。それとともに、今まで緊張していた体の力が抜けた。乳首をいじりながら、もう片方の手を開いた足の間に滑り込ませる。
「ウウウ、もうダメです、早く攻めて欲しい。シャワーに行きましょ」
 彼女は体の中から溢れてくるものを辛うじて押しとどめ、私に委ねていた体に力を呼び戻して立ち上がった。
 服を脱がせ合う。裸になっても期待が裏切られることはなかった。肌も白くてきれいだ。その肌の白さにくっきりと浮かび上がる陰毛の長さが目に入った。全然手入れをしていないみたい。新人さんにはよくあることだ。初対面でこんなところまで注意するのは嫌がられるかと思って黙っていることにした。
 互いにバスタオルを体に巻きあってから、彼女がフロントにコールをしたら、二つあるシャワーがいっぱいで、しばし待つことになった。私はこれ幸いと彼女のタオルを外して彼女の小さな乳首をなめる。
 彼女は抵抗せず、「アーアー」とすぐに声を出して、私の頭を強く引き寄せた。シャワーがいっぱいなんだから仕方がないと、自分自身を納得させたのだろう。
「すごく優しいなめ方をしますね。今日はいっぱい攻めて欲しい」
「いいよ、たくさん攻めてあげるよ」
「嬉しいです。イケるかもしれません」
 私は彼女の細く伸びた人差し指をなめた。潤んだ目をこちらに向けながら、中指、薬指を自ら差し出す。彼女も私の手をとると、指を口の中に入れた。
 エロモードに入ると、人格まで変わったんじゃないかというくらいに豹変するタイプがいて、Mちゃんはその典型だった。私は彼女が変身するスイッチを入れてしまったようだ。
 彼女をベッドの上に寝かせて、指に長い陰毛をからめつつ、腰骨をなめる。彼女は腰をくねらせ、隣の部屋に間違いなく聞こえるだろう大きな声を出し始めた。
「アッ、アッ、アッ、気持ちいい、もっとナメて欲しい、アーッ」
 喉の奥までが見えるくらいに大きく開いた口から出てくる声があまりに大きく、わざと出しているのかとも疑ったのだが、この店ではそういう指導はしていないはずだ。
 もはや彼女の理性は、快楽を抑えることはできず、彼女の声を抑えたのは、フロントからのコールだった。シャワーが空いたのだ。
 彼女は恥ずかしそうに俯いてバスタオルを体にまき直し、私の手をとって、シャワールームに案内した。
 いつものことだが、私は彼女の体を洗ってあげた。
「優しいんですね、アッ」
 すでに彼女の体はガードがきかなくなっている。彼女の後ろに回り、セッケンがついた指が乳首を撫で回すと、彼女は立ったまま、また首を私の体に任せて、声を出す。手を股の間に差し入れて、大きくなったクリトリスに指先を当てて震わせた。
 隣のシャワールームに声が聞こえるため、ここの店の子たちはここでは声を潜め、声を押し殺す様子がまたよかったりするんだが、彼女はおかまいなしに声を出す。
「アーッ、アーッ、ソコ、気持ちいいー」
 私の方が「隣はこんなところでナニしてんだ」と思われるのが恥ずかしくなって、伸ばしていた手を引っ込めて、すぐに個室に戻った。
「もう感じてとまらなくなってきちゃった。私の体の全部を攻めてね」
 新人とは思えない大胆なセリフだ。
「全部攻めてあげるよ」
 再度彼女を寝かせて、キスをする。私の背中に手を回し、舌をからめてくる。乳首をなめると、体にしがみつきながら、それだけでBGMをも凌駕する大声が出る。
「気持ちいいーッ、気持ちいいーッ、もっと吸って、もっと強く吸って」
 乳首に歯を当てるようにして、さらに強い刺激を与えつつ、クリトリスに手を伸ばす。
「そこ、気持ちいい〜、指がクリちゃんに吸いつくみたい」
 クリトスリの皮をめくり、人差し指の腹を押し当てると、彼女は私の手の上に自分の手を重ね、オナニーをするように動かし始めた。
「ここが気持ちいいんだ」
「ウン、ウン、気持ちいい、そこが気持ちいい〜」
「なめてあげようか」
「なめて、なめて、いっぱいなめてぇ〜」
 彼女の望み通りに舌を当てると、声はいっそう大きくなった。
「すごいすごい、気持ちいいよ〜、こんなの初めてぇ〜」
 エロ小説にでもあるような「獣の咆哮」だの「断末魔の悲鳴にも似た」といった形容には似つかわしくなく、どこまでも「若い女のよがり声」の範囲で、AV嬢の効果音としては望ましいものなんだろうが、声が筒抜けのヘルスで出すものとしては、いかんせんヴォリュームが大きすぎる。
 それでもまだこのときの私は彼女のヴィヴィッドな体の反応と、それを素直に声にする彼女を好ましく思っていた。
 やがて彼女は体を痙攣させた。もうイッてまったらしい。
 グッタリした彼女の横に寝て抱き締める。
「早いね」
「ビックリした。今まで男の人にイカされたことなんてないのにぃ。すっごい気持ちよかった」と彼女は私の体に抱きついた。
 しかし、三十秒もしないうちに私の下半身に手を伸ばした。
「ねえ、大きい」
 私も同じように手を伸ばして、中から溢れてくるとろけた液体の触感を楽しむ。
「また気持ちよくなってきちゃう」
「いいよ」
「またイカせてくれる?」
「約束通りたくさん攻めてあげるよ」
 ローションを陰毛の上に垂らす。
「冷たい」
 彼女はそのローションを私の体になすりつけて強く握る。体を重ねて正常位素股をする。すぐに彼女はまたまた大きな声を出す。今度は大きいだけではなく、セリフの内容も大胆だ。
「すごい、チンポが大きい〜」
 いくら興奮したからって、「チンポ」という言葉はちょっとナニだなと思いつつ、彼女の興奮振りに煽られるように、私も激しく腰を動かす。
「チンポとオマンコがこすれているよ〜、オマンコからクチュクチュいやらしい音が出ているよ〜」
 さすがにこれには困惑した。二人きりならいいんだが、また、囁くくらいならいいんだが、他のお客さんもいるんだから、大声で「オマンコ」と叫ぶのも避けた方がよかろう。それと、この言い方は挿入しているかのようにも思われる。かといって、せっかく盛り上がっているのに、注意するのはためらわれる。
 そんな私の気も知らず、彼女は彼女の本性をいよいよむき出しにし始めた。
「チンポが暴れてるよー」
 もはや疑いなく本番しているときのセリフである。もうちょっと言葉を選んだ方がよかないか。「すごく感じやすいので、恥ずかしいんです」という彼女のセリフの前半「すごく感じやすい」のは正しいが、後半の「恥ずかしい」というのは当たってないように思う。こうなってしまったことをあとで恥ずかしがるつもりかもしれないが。
 私は照れながら、誤解されないため、強く握っていた彼女の手を外し、再度クンニに移行。しかし、こんなことでは彼女の高まりを鎮めることはできなかった。
「私のオマンコおいしい?」
「うん、おいしいよ」と私は小声で答える。
「オマンコ欲しいの?」
 単に自分の体が感じる様を表現するのでなく、この言葉にはより積極的な彼女の意思が込められている。日頃、レディコミやエロ小説でも読んでオナニーしているんだろうか。どうも彼女の語彙はそれらのセリフに似ていることが気になり、私の方が恥ずかしい。
 ここで「オマンコ欲しい」なんて言ったら、また本番を迫っているみたいである。私は返事をしなかったが、彼女はわざと本番さしていると誤解されるような言葉を選んでいるようにさえ思える。
 彼女は私の指をつかんで、自ら中に挿入させた。
「ああーん、中も外も気持ちがいーッ、オマンコが壊れちゃうよ〜、もっとこすって、中をこすって」
 このフレーズも困ったもんである。この店、原則として指入れ禁止なのだ。それでも本人がいいと言えば入れてもいいんだが、ここのまでのセリフの流れからすると、チンコを入れていると思われることは必至だ。彼女自身、セックスをしたくなったが、そうするわけにはいかず、指で代用して、挿入されたのだと頭の中でストーリーを展開しているようでもある。
 私はそのまま指の腹で膣壁に圧力を加える。足を抱え上げて、足の指をなめ、踵を噛んだ。
「ヒーッ、またイクよ〜、イッていいの?」
「いいよ」
 彼女の体は再び痙攣した。やっとこれで落ち着いた。
 彼女をまた抱き締める。彼女はキスを求めてきて、しばらく舌を絡め合った。
「今までつきあった人たちはみんな入れてすぐにおしまいだったから、こんな風に攻めてもらったのは初めてです。この間までつきあっていた彼氏も童貞だったから、すごく下手だったんですよ。今わかったんだけど、私って淫乱なのかもしれない」
「うーん、そうだね。ここまで店で感じる子はなかなかいないよ」
「えー、そうなんですか。私だって、自分の体がこんなに感じるなんて知らなかった。でも、もっとして欲しい」
「いいよ。でも、声はもうちょっと抑えた方がいいんじゃないかな」
「えー、そんな大きな声を出してましたか?」
 全然わかってないみたい。
 私は彼女の期待に添うべくまた指を入れつつ、クンニをした。すでにツボがわかっているので、彼女をイカせるのは簡単だ。
「あー、すごい、すごい、さっきよりすごい。どうして私のオマンコ、こんなに感じるの? もっとして〜もっとして〜、クリちゃんを噛んでぇ〜、オマンコの中でもっと暴れて〜」
 私の注意はなーんも役に立たなかったようだ。こうなったら、さっさとまたイカせるしかない。
「アーン、チンポが欲しいよー」
 これこれ、チミ。
 内心、「そんなこと言ってねえで、さっさとイケよ」と願いつつ、Gスポットに指を当てながら、クリをナメ続けた。
 こうして彼女は瞬く間に三回イッた。
「あー、どうしよう。体中がまだ痺れている。ほら、見て」
 彼女は私の目の前で手を広げた。小刻みに震えているのがわかる。
「こんな気持ちいいことを知ったら、もうつまらないセックスができなくなっちゃう」
「まだまだ開発されそうな体だよね」
「もっともっと開発して欲しい」
「後戻りできなくなるよ」
「いいですよ。私、この仕事が合っているみたいだって今わかった。仕事が辞められなくなっちゃいそう」
「辞めなきゃいいじゃん」
「うん。でも、こんなふうに感じさせてくれる人にはなかなか会えないかも」
「また来てあげるよ」
「ホントですよ」
 彼女は抱きついてきて、長いキスをした。彼女はもっとやって欲しそうだったのだが、私は唇を離して、抱き合ったまま会話を続けた。間もなく時間が来て、タイマーが鳴った。
 ここまで彼女は一度も私をイカせようとはしなかった。出さずに済ませることはよくあるとは言え、特に新人のうちは「出して帰らせなければいけない」「男は出さないと満足できない」という考えに強く支配されているため、そのことを気にするのが多い。「しなくていいよ」と言っても、「ホントにいいんですか」「私、何もしてないから悪いです」なんてことくらいは言うものだが、そんなことを忘れてしまうくらいに気持ちよかったのだろう。
 シャワーを浴びながら彼女を抱き締めた。
「ねえねえ、見て。すごくいやらしい」
 彼女は壁の大きな鏡を見ている。全裸で抱き合っている姿に興奮しているのだ。
「AVを観ているみたいで、また濡れてきちゃう」
 この子、普段もよくAVを観てはオナニーをしているらしい。
 お尻の方からシャワーを当てると、腰を動かし始めた。シャワーを当てたまま、指でクリをいじる。シャワーの湯とは別に、とめどもなく中から溢れてくるのがわかる。
「アッ、アッ、またイキそうになるよ」と彼女は指でいじられている自分の姿を鏡で見ている。
 このときは隣のシャワーに人がいないのをいいことに、私は指で刺激を与え続け、また彼女は大きな声を出し始めた。このまま指でイッてしまうのではないかとも思ったのだが、ここで隣のシャワールームに人が入ってきた気配。彼女はまだ声を出しているが、私の方が指の動きをとめた。
 服を着ながら彼女はこう言った。
「声を出しすぎて、喉が痛いみたい」
 あれだけ出せば痛くもなろう。
 個室を出るとき、彼女は「忘れられない人になっちゃいそう」と後ろから抱きついてきた。
「また会おうね」
「絶対また来てください」
 カーテンの手前でも、彼女は舌を奥深く差し入れてきた。
 彼女は私がこの店とツーカーであることを知らないため、私は一度店を出てから店内に引き返し、待合室で店長に報告した。店としても、女の子の接客態度を知りたがるのである。
「あの子、ものすごいいやらしいね」
 そう私は言ったのだが、そんなことは報告するまでもないことだった。
「フロントまで声が聞こえてきましたよ。こっちまで恥ずかしくなりました」
 やはり全部聞こえていたらしい。マズいな。本番してないのに、きっと店長はしたと思っただろう。店長に限らず、店内のすべての人がしたと思ったに違いない。
 このあと私は待合室で時間潰しをしていたところ、Mちゃんが仕事を終えて、フロントに出て来たことがわかった。
 声を聞いていたら、意外にも彼女の話し方はそっけなく、さっきの彼女とは声まで違って聞こえる。
 店長がギャラの説明を終えたら、「雑費ってなんですか」と彼女は事務的とも言える抑揚のない声で聞いた。
「うちは二本以上ついたら、タオル代とかティッシュ代として、二千円の雑費をもらうことになっているんだよ」
 面接の段階で、雑費について説明しておいた方がよかないか。ギャラをもらうときに初めてこういうことを知ると、騙されたって気にもなりかねまい。だとしても、初めてのギャラをもらうんだから、「ありがとうございました」の一言があってもいいのに、彼女は黙って帰っていった。
 店長は彼女とエレベータに乗って下まで降りていったが、すぐに戻ってきて私にこう言った。
「あの子、たぶんもう来ないですね」
 店長によると、駅の方には向かわず、歌舞伎町の奥に向かったというのである。送ってあげつつ、店長はその様子をしっかり観察しているのだ。
「いくつかの店を回ってみようと思っているんじゃないですかね。これから面接でしょう。だから、今日は早く切り上げたんだと思いますよ。はっきりわからないけど、僕の勘では今日で終わりでしょう。うちはおとなしいお客さんが多いので、あんなすごい声を出されると、退く客がいそうだから、うち向きじゃないですしね。ああいう子は、完全個室の店の方がいいんじゃないですか」
 彼女のことをああも褒めていたのに、あまりの凄まじい声で店長はすっかり冷めてしまっている。彼女を採用しなかった店があったことが少し理解できた。講習でもあの調子で感じまくって大声を出したために、敬遠されたのではなかろうか。
 さらにちょっと気になることがあった。彼女は私が風俗業界に詳しいことを知って、帰り際、「イメクラってどんなことをするんですか」などと質問をしてきて、「イメクラの方が攻め好きの客が多い」と私が説明したら、彼女は目を輝かせていたのである。もともと好奇心旺盛で、いろんな店に行ってみたくなるタイプなのかもしれない。金に困っているわけじゃないので、好奇心を優先して、他の店に面接に行くのは想像しやすい。
 セリフの激しさには困ったが、あのいやらしさは忘れがたく、再会を約束していたことでもあるので、私はまた出勤することを期待して、数日後に店長に電話をした。
「やっぱりあれから連絡がないんですよ」
 あの女、「絶対にまた来てください」と言っておきながらなんだよ。
 もう来ないことを確信して、店長は彼女のことをあらいざらい教えてくれた。
「あの子、店の人間に対しては冷たいんです。ツンツンしてお高くとまっているカンジなんですよね」
 あの帰り際の口調はたしかに無愛想だった。
「講習が終わったあと、ちょうどメシ時だったので、一緒にメシに行こうと誘ったのに、?いいです?って断られました。店の人間とベタベタしたくない子もいるので、しっかり仕事をしてくれればそれでもいいんですけど、そういう子は使いにくいんですよ。無理なことは頼みにくいし。これじゃあ、客受けも悪いと思ったんだけど、プレイになると、あの声でしょ。全然態度が違うんですよ」
「うーん、でも、演技というのでもなかったから、どっちも彼女なんだろうなあ」
 スタッフには冷たく、お客には愛嬌を振りまく子はよくいて、いかに扱いにくくとも、客受けがいいなら何の問題もない。
 店長はさらに言葉を続けた。
「実はあの子って変態なんです」
 もう来ないと判断して、店長はとんでもない話を教えてくれた。彼女は淫乱なだけじゃなく変態だったのである。
 この店では、店の人は講習をせず、以前、風俗嬢をやっていたベテランの女性が講習をしている。女の子たちとしても、その方が安心でき、恥ずかしくもない(人によってはこっちの方が恥ずかしいとも言う)。その上、女同士の気楽さで、また、店の人ではないとの安心感から、女の子たちは面接では言わないようなことをペラペラと話し出すため、女の子の情報が得られるメリットがある。
「講習の先生(その女性のこと)が教えてくれたんですけど、彼女は露出狂で、ノーパンで電車に乗って、中が見えるように足を広げるのが好きらしいんですよ。目の前に男が一人だけいて、わざわざ電車の中で下着を脱いで見せたこともあるって言ってたそうですよ」
 なんと。表向きは気取った女を演じていて、その反動なのか、誰にもわからないところでは淫乱な自分を発散させる。風俗で働こうと思い立ったのも、そんな自分の性癖を満足させるためだったらしい。あの興奮ぶりは「会って間もない相手に攻められているからこそ」、あの大きな声も「人に聞かれているからこそ」だったんだとも思える。
 本番を思わせる彼女の言葉は、本番していることを想像して興奮していただけではなく、自覚的に「あの女は何をしているんだ」と皆に思われるような内容を叫んでいたのかもしれない。
 露出好きの彼女の場合は、プライベートでのセックスよりも、こういう場所の方がきっと興奮しやすく、その刺激が欲しくて働きだしたのだろう。彼女にとっては「風俗店プレイ」である。だったら、それこそ痴漢プレイや夜這いプレイ、オナニー鑑賞などがあるイメクラでなら、もっと本領を発揮できそうだ。でも、本番をやりかねないタイプでもある。本番前提のソープやホテトルではなく、やってはいけないヘルスでこそ本番したがる客がいるのと同様、彼女もまたやってはいけない場所でこそ高まるんじゃなかろうか。
 ことによると、彼女は最初から風俗で働く気などなく、面接や講習で刺激を得ていて、この店では遂に接客にまで踏み込んだだけだったのかもしれない。しかし、プライベートのセックスでイケなかったのが本当だとすると、刺激欲しさで風俗店で働くことを辞めはしないだろうから、どこかでまた再会するかもしれない。そのときは猿ぐつわをもっていった方がよさそうだ。でも、そういうことすっと、彼女はもっと興奮しそうだな。
(「ナンバーワンギャル情報」二〇〇二/一〇)
追記▼今のところまだ再会できていない。さして金が必要なわけでもなさそうだったので、一通りの店を回って、刺激慣れしたら、あっさり辞めるかもしれず、もう風俗業界にはいないかも。電車の中で再会することを期待しよう。

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