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ポット出版欠歯生活
第13回再開のごあいさつ

書き手北尾トロ
[2004-05-21公開]

 お久しぶりの北尾です。
 半年以上も連載を休んでしまい、まことにまことに失礼しました。
 はじめのうちは「早くつぎを」という催促メールが多かったんですが、これだけ長く書かないと、読者のなかには「もう完治しただろう」と思う人がいるみたいですね。治ってしまったので、いまさら書くこともなくなったんだろうと。
 通院してるんだって、いまだに。
 ていうか、佳境。
 さすがに新しいトラブルは起こらなくなったけど、ここへきて基礎工事が完了するとともにインプラント治療が本格化し、やたらと出費がかさみ始めたのだ。それはそれで地獄である。
 しかも一気には進まないので、相変わらずの欠歯生活。ちなみに04年5月現在は、右下奥歯3本が欠けていて、困難な生活を強いられている。そして、完治のメドはいまだ立っていない。
 なので、過去を振り返るカタチになってしまうけど、03年10月以降に起きたことを書いていきながら、リアルタイムに追いついていきたいと思う。

 さて。
 12回目の文章は、抜歯した左奥上3本目の両隣を整備して、ブリッジでつなぐ計画で終わっている。ぼくも、金もないのだからしょうがないかと思い、そのように書いた。
 ところが、ここで思わぬ反応が。ある人から「ちょっと話したいことがある」と連絡があったのだ。ある人なんて書くこともないか。ポット出版の沢辺さんである。ぼくがイベントで渋谷にいるといったら、すぐ自転車でやってきましたからね。
「北尾さんが本当に納得しているならいいんだけど、ぼくとしてはブリッジに賛成できない」
 喫茶店に入るなり、沢辺さんは言うのだった。
「ブリッジにしていいことって、何がある? 安くすむってことはあるとして、それ以外にないんじゃないの。いや、安いというのも“いま”すであるだけで、長い目で考えたら高くつくことになるんじゃないか」
 ブリッジというのは、抜いた歯の両隣の2本をつなぐことで、欠けた部分を補う方法だ。中間の歯には土台がないのだけれど、橋渡しをすることによって、2本の歯で力を合わせ、3本分をカバーするわけである。渓谷にある吊り橋をイメージしてもらえばいいか。
 吊り橋であるから、両隣の歯にはしっかりしてもらわないといけない。そこで、この2本の上部をいったんならし、フラットな状態にして、橋を造ることになる。
「1本の欠歯をなんとかするために、2本の正常な歯を削ってしまう。それがブリッジってことでしょ。それって、どうなんだろう。ソンなんじゃないの」
 うーむ、説得力あるなあ。
 ブリッジによって、多少の不便があるとしても(食べカスが隙間につまりやすいとか。それもイヤだが)ずっと過ごせるならいいのだが、もしそうでないとすると、両隣の2本は“削り損”になりはしないか。
 自らも歯に問題を抱える沢辺さんは、なおも熱弁を振るう。
「というのもさ、オレ自身がブリッジのせいでおかしくなった経験があるからなんだよ。お金のこととか大変だろうけど、冷静に考えて欲しいんだ」
 やはりなあ。そうだと思った。話しぶりが、ブリッジ憎しって感じだもん。
                               (次回に続く)

第12回●3本目の抜歯 第14回●削りっぱなしの人生
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