2010-11-22

11/26(金)図書館総合展・学術情報オープンサミット「首都・東京の図書館再生計画」のレジュメ

糸賀さんに脅されて(笑)、必死に書き上げた。
まずは日誌で公開しておきます。

図書館総合展・学術情報オープンサミットの
首都・東京の図書館再生計画 −23区の図書館を考える−第9会場(第12回), 公共図書館関係者向け, 一般向け
のウエブ情報はコチラ

それにしても、図書館総合展のサイトはわかりづらい上に、情報が薄いな。
図書館総合展がコレじゃまずいなー。

ココから────────────────────
図書館総合展・学術情報オープンサミット 2010-11-26 15:30〜17:00
首都・東京の図書館再生計画 −23区の図書館を考える

●自己紹介
沢辺 均(ポット出版=(株)スタジオ・ポット)
・1956年生/東京生まれ
・ポット出版で『ず・ぼん(図書館とメディアの本)』のほか、図書館関連の本なども発行。年間20点、既刊約160点。
・版元ドットコム/JPO近刊情報センター/国立国会図書館全文テキスト化実証実験/雑誌協会雑誌デジタル化実証実験などに参加。
・NPOげんきな図書館理事(中野区 東中野図書館/江古田図書館 渋谷区 代々木図書館/こもれび大和田図書館を受託)
・20代で地方公務員を経験(渋谷区事務職、図書館勤務経験はなし)

●23区の公立図書館の現状と問題点の指摘(1人3点づつ)
日本の図書館は、23区でも全国でも、おおむね好評で、それなりにまわっている(住民に認知が高く好評な公立施設=タダ・低料金で近くにある余暇の施設が好評)
地域図書館の現場を見ていると、調べもの・レファレンスというより、タダで本を借りる場所/落ち着いて勉強+仕事をする場所、として使われているのではないかと思う
それはそれでよいと思う。図書館を運営している人、公共団体で働く人が現状維持で満足ならそれも、ヨシ、だと思っている。
利用者はそれで満足しているように見えるからだ。

ただ、
・人財はどんどん減っているいるように思える。
 正規職員は、図書館プロパーを育てられていない。団塊世代以降はどんどんへるのではないか? 「不良」職員問題もあるし、同僚職員、後輩職員を育てられていないのではないか
 委託現場でも、同じような問題を抱えていると思う。給料の問題もある(ただし、アルバイト時給ですませてよい仕事も図書館にはあると思う。カウンターでニーズを知るは教条主義)
・せっかく「民間の力を活用」といって委託・指定管理化しても、正規職員が権限を持ったままで、ただの低賃金導入だけのために使われているだけ。もったいない。
・ネットワークへの無知が著しい。岡崎市立図書館の問題/図書館のサイトから新しいサービスは生まれていない

●23区の図書館再生の可能性とその方法(処方箋)(1人3点以内づつ)
前提=現状の図書館だって充分その機能を果たしてると思う。
 みんなで悪いとこ探しまわるのはもうヤメたいと思っている。
 ただし
  書籍の年間販売冊数とほぼ同じだけの本を貸し出しているのもどうかと思うし、
  寄付要請にベストセラーを並べるのも品がないと思う。
  出版産業がなければ図書館のネタはないのだから
 という点は気になる。

・たった一人からの出発を応援する。
 面白い図書館には、面白い人がいる。古いタイプでも、新しいタイプでも
・たった一人からの出発はネットを活用する人から生まれてくる気がする。
 たとえばEnju。リスクや入札などのシステムのまえで、公共図書館で広がっていない。(むしろNDL、企業図書館での実績が先行)
・安上がりでない委託や指定管理にも可能性はあると思う。その場合、公設民営のように権限の一定期間の委譲、広域化が必要だと思う。

●以下はオマケ

○東京23区の特
・人口密度が高く、近隣に住民・仕事場があって、利用者・貸し出しはそれなりにおおい
・もともと正規職員は図書館採用でなく(特別区人事委員会に司書・図書館員採用がない)、事務職員=区役所内事務職場すべてに移動する
・民間委託・指定管理がすすんでいる。それでも図書館は大きな問題もなく回っている。

 貸出し1冊に使っている年間資料費 43.5円/43円(23区/全国)
 人口1人あたりの資料費 352円/210円(23区は全国にたいして一人あたり168%資料費をかけている)
 人口1人当たりの貸出し冊数 8.08冊/5.29冊(23区は全国より153%貸出しが多い)

○図書館はどれだけ本を買っているのか
(ポット出版サイト 「ポットの日誌」図書館はどれだけ本を買ってるか/貸してるのか 2010/07/07 沢辺均)

 2007年の数字だけど
・雑誌と書籍の実売金額は 2兆1983億円
(「出版年鑑 2008」出版ニュース社)
・図書館資料費決算額は 309億円
(「日本の図書館」日本図書館協会)
で 309億÷2兆1983億円で割ると、1.4% になる。

つまり、図書館は出版物の売上げのうち1.4%のお客さんなのだ。
ちなみに、1982年は、同様の計算で0.9%なので、「貢献度」は増えている。

○図書館はどれだけ本を貸しているのか
同じく2007年の数字だけど
・雑誌と書籍の推定販売部数は 33億6811万冊
(「出版指標年鑑 2009」出版科学研究所)
・図書館の貸出し冊数は 6億7496万冊
(「日本の図書館」日本図書館協会)
で、6億7496万冊÷33億6811万冊で割ると、20%

・33億6811万冊の推定販売部数は
書籍 7億5千万冊 雑誌26億1千万冊。

図書館は書籍も雑誌も貸しているわけだけど、
仮に、貸しているのは、ほとんどが書籍だ、
と考えれば、出版社が売っている書籍の部数の 90%くらい売って貸し出していることになる

だけど、日本図書館協会の調査には、貸出し冊数のうち書籍と雑誌の比率はみつからない。

とまあ、およその数字は押さえておこう、かと。

ココまで────────────────────

このエントリへの反応

  1. [...] フォーマットなどの打ち合わせ。 近刊情報センターのウエブのデザインやらサイトマップやら、図書館総合展のレジュメやら。 そしてこのためた日誌下記に約50分もかけてしまった。 [...]

  2. 定員オーバーで入れずに、展示会場入口の中継で見てました。しかも最後の15分だけ(ブース見て回ってたから)。しかしマクドナルド時給と同じレベルじゃ、委託の現場はワーキングプア一歩手前です。
    個人的に言えば、複本量減らして本屋にも利益を、資料費と設備投資を減らして人件費をと。
    勤労者の収入減らして国民を貧しくして、そのうち司書も格安給与で文句言わない外人労働者をプロ育成かなあと、白けた気分で見てました。
    ある程度の経済国家になったら図書館は縮小して個々人で本を買うようになるほうが、豊かなんじゃないかと思う今日この頃です

  3. 委託の図書館で働いている人かな? 
    今いる現場でなんかしないと、どんどん衰退するだけじゃないかな?と思う今日このごろ。
    もちろん図書館を縮小する未来はあるのかもしれないけど、今はまだその時じゃないと思う。
    もし現場で働いているのなら、まずその現場をいい図書館と新聞ネタになるぐらいにするようになんかやってくださいよ。

  4. >もし現場で働いているのなら、まずその現場をいい図書館と新聞ネタになるぐらいにするようになんかやってくださいよ。

    そんなの、職権も無いのにやれるわけがないじゃないですか。
    やろうとしても上に潰されます。上がウンといっても、基幹館の意識とマッチしなければ、そこで潰されます。そして「来期はお宅の会社は無しね」と言われて会社から恨まれます。

    TRCや丸善、アスペクトがいくらで自治体から請け負ってるか、どんな仕事が現場でなされているか、実態調べてみてください。新宿や千代田はまだましなほうです。

  5. 通りすがりの名無しさん。

    権限というのは、もちろん与えられるのもあるけど、実質的に権限が移動することもあると考えています。
    仕事のできる人に、仕事が集中するのも、そうした例の一つだとおもいます。

    まあ、権限がないからなにもできないな、と思うなら、いまの給料に納得してはたらくか、もっといい給料が欲しければ、転職するしか道はないですね。でも転職したっておんなじことが待ち受けている可能性もまた高いですよね。