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[本・書籍総目録 ・出版情報……の話]
データベース日本書籍総目録をつくる

本間広政
[1998-10-24]

現在、日本書籍出版協会は「データベース日本書籍総目録」の構築を進めている。このデータベースの完成は、出版業界にとって魅力あるものである。一方で、書協のホームページBooksとの関わりにおいて不鮮明な部分も残る。そこで、本データベースの実際とBooksとの関係性を明らかにしていただいた。


文◎本間広政 学習研究社営業促進部長
ほんま・ひろまさ●1941年、山形県に生まれる。
1967年に東京都立大学を卒業後、株式会社学習研究社に入社。現在、営業促進部長。
1997年より、日本書籍出版協会書籍データベース特別委員会ワーキング・グループ委員を委嘱されている。


はじめに

 昨今の出版業界は返品の増大とそのことにも関係あるのだろうが、売れ行き不振に悩まされている。そんな中、この3月末には公正取引委員会から再販売価格維持制度について「著作物再販制度の取扱いについて」なる公表文がでた。以来業界四団体(日本書店商業組合・日本出版取次協会・日本書籍出版協会・日本雑誌協会)の関係者はその対応に努めている。
 最近の雑協の会報は公取委が「再販は維持で結論、弊害の是正を求める」と報じている。そして「(再販制の)弾力的運用、流通改善で(業界に)活力」をもたらしたいとしている。公取委は先の公表文で業界に「(1)時限再販・部分再販等の弾力的運用、(2)割引制度の導入等、多様な価格設定、(3)再販制度の利用・態様についての発行者の自主性、(4)小売業者のサービス券の提供等、販売促進の確保、(5)流通ルートの多様化、(6)取引関係の明確化・透明化、その他取引慣行上の弊害の是正」を求めている。
 書協が現在取り組んでいる「データベース日本書籍総目録」(「書籍データベース」)の作成はここで言っている再販制の弾力的運用への寄与はともかく、業界の流通改善の一助にはなるものと思う。こうした努力が売れ行きの不振を少しでも和らげることになればと念じている。


●「データベース日本書籍総目録」構築の意義

 これまでも世の中に書籍データベースは存在した。そしてそれらは十分に夫々の使用目的に適っていた。網羅性・信頼性・独自性から見て書籍データベースの製作元と認知される機関・企業・団体は10幾つと言われている。しかし、「データベース日本書籍総目録」は次の点でそれらと画期的に異なる。
 第1点はこれまでのものはどちらかと言えば発行記録としてのデータベースであったが、「データベース日本書籍総目録」は今読者が入手可能なタイトルだけを収録した流通対応型のデータベースなのである。
 発行記録としてのデータベースは保有タイトル数が150万とも250万点ともいわれる。まさに出生届だけの戸籍簿に似ている。国会図書館製作のデータベース等はその目的からして発行記録のデータベースであるべきであろうが、読者の注文や照会に対応する書店店頭での書籍データベースは入手可能かどうかが問題になる。そのためには出生届は勿論、死亡届も正確に記帳された戸籍簿(書籍データベース)でなければ用を成さない。
 第2点はこれまでのものは発売後の実物によるデータ入力であったが、「データベース日本書籍総目録」は発売日3週間前(出版社校了時点)にデータ入力される。この事によって、書店等は発売日前に受注活動が可能になる。
 第3点はこれまでのものは製作者の枠組み内においては提供・開示されることがあっても、概して閉鎖的であった。しかし「データベース日本書籍総目録」は提供する際の価格やこれまでのデータベース製作者との折り合いをつける事項もあり決定ではないが、必要とする第3者に提供・開示を考えている。
 この事はこれまで機関・企業・団体等が夫々独自に製作してきたデータベース作成の重複によるムダを省ける。


●「データベース日本書籍総目録」の内容

 書協は12月に書協会員社の経営者・管理者向け説明会、3月には実務者向け説明会を実施した。そこで配布された資料に基づいて「データベース日本書籍総目録」の内容を説明する。
(1)データベースに収録されるタイトル
 1997年末までに刊行され読者が購入可能な書籍、約6500社・53万点は一挙に登録する。1998年以後の新刊タイトルはシステム稼動後暫時登録する。システムが安定した段階では日次に追加登録される。
 収録しない刊行物は雑誌・官公庁出版物・検定教科書・カレンダー・日記帳・非売品書籍等である。
(2)データベースの項目
必須項目……ISBN、分類コード(Cコード)、書名、書名読み、副題、版、叢書・シリーズ名、叢書・シリーズ名読み、著者名1、著者の種類を表わす語1、著者名1読み、著者名2、著者の種類を表わす語2、著者名2読み、著者名3、著者の種類を表わす語3、著者名3読み、出版年月、書店発売日、判型、ページ数、本体価格、特価、特価期限、出版社(者)名、取引コード、発売社(者)名、セットコード
選択項目(出版社の)……読者対象、分類、内容紹介


●「データベース日本書籍総目録」への登録方法

 専用の登録用紙によるか、電子媒体による。
(1)専用登録用紙による登録
 所定の原稿用紙に出版社が記入し、郵送かファックスにて書協に送る。書協が入力する。
(2)電子媒体による登録
 書協指定のフォーマットに基づいたCSV形式あるいはタブ区切りによるテキストデータを以下の媒体あるいは送信方法で郵送またはオンラインで書協に送る。
▼フロッピーデイスク ▼E-Mail ▼出版VANを経由して▼インターネットのFTPサイトを通して ▼書協のホームページBooksを通して(検討中)


●「データベース日本書籍総目録」システムの始動

 4月1日より電子媒体での入稿希望社の受け付けを開始し、個別に相談のうえ、6月からテストを行い、8月から本格稼動に入る。


●「データベース日本書籍総目録」とBooksの関係

 「データベース日本書籍総目録」は書協の書籍データベース特別委員会にて運営され、書協のホームページBooksは書協のインターネット委員会にて運営されている。共に書協管轄であるために「データベース日本書籍総目録」とBooksを同一のものと混同しがちだが、運営の委員会も異なるように内容もまったく異なるものである。
 「データベース日本書籍総目録」は上述したように書籍のデータベースそのものであり、Booksは書協のホームページである。Booksの名前から書籍データベースの感を受けるがそうではない。Booksはインターネットを利用して書協が「データベース日本書籍総目録」等を世間に開示しているホームページ、つまり仕組みシステムなのである。


「データベース日本書籍総目録」の課題

 第1点は何と言っても出版社の協力である。1997年度版で約6500社のタイトルが収録されているといわれている。この膨大な出版社がどれだけ3週間前(校了時点)に情報を提供してくれるかが最大の課題といえる。
 聞くところによれば、6500社のうち「1年に1点未満の新刊を発行する出版社が1000社、1年に1点の新刊を発行する出版社が1000社、1年に2点の新刊を発行する出版社が500社」という。
 取次に口座のない出版社や、見本納本のない出版社の新刊もきちんと収録してこそ、網羅性に富んだ利用者にとって魅力的なデータベースといえる。
 第2点はこれまで独自に書籍のデータベースを製作していた機関・企業・団体の協力である。「データベース日本書籍総目録」が「データベースのデータベース」といわれるように、こうした関係者に利用していただいてこそ業界トータルでの合理化が進む。
 第3点は「データベース日本書籍総目録」を核にして、利用者が如何に豊かな内容のデータベースに拡張するか、そして読者に対して使い勝手の良い書籍データベースとして開示出来るかである。この事が購読者を増大させる。
 例えば、「データベース日本書籍総目録」の内容では出来ないが、「書名あるいは目次に『椎茸』の言葉のある書籍の新刊がデータベースに登録された時、その書籍に関する情報を必要とする」と事前に登録した読者に対して、E-Mailで送信してくれるデータベースと仕組みを造るならば、購読者は確実に増大するはずである。
 第4点は「データベースのデータベース」の製作者は出来るものならば第3者的立場であるべきかと考える。なぜならば、第1・2点の課題をより解決しやすくするためにも、中立的立場がより保障された方が良い。
「データベースのデータベース」の製作者自身が第3点で述べたような「事業」を手がけた時、第1・2点で述べた関係者と独占関係あるいは競争関係にあると当該者に思わせかねない。出来るならば「データベースのデータベース」の製作者はこうした関係を避けた方が好ましい。

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