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反響●『「オカマ」は差別か』 [2002-03-18]

●反響-02 
[02-03-18アップ]
ポット出版にとどいたメール

M・K

 

 

前略 ポット出版編集部様

 はじめまして。貴社に注文した『「オカマ」は差別か』を読み終えましたのでその感想を送ります。何かの参考になれば幸いです。

 

 『金曜日』誌上で昨年起きた「オカマ表現問題」についての経緯や議論・意見をまとめた『「オカマ」は差別か 『週刊金曜日』の「差別表現」事件』を読みました。

 まず、当事者の枠にとどまらず、広範な人たちがこの問題について考え、意見を表明したことはいいことだと思います。次に、同性愛者の中からすこたん企画や『金曜日』編集部の対応について異議が出たことは、この問題をより深く考える上で大きかったです。

 本書は大きく分けて、問題とされた当該記事…東郷健氏を扱った及川健二氏の記事と、この問題について論じ合った公開シンポジウムの全容、それにこの問題を巡るいくつかの意見が収められています。そのうち特に出色なのはシンポジウムの記録と当該記事の担当編集者である山中登志子・元編集部員の手紙です。

 シンポジウムで特に重視された点はカバー裏表紙にある「差別の判定は被差別者だけのものでいいのか」ということです。従来からの「被差別者が判断をし、差別者を指導する図式」に疑問を投げかけ、新しい反差別論の構築への問題提起がなされています。シンポジウムにも出席した山中氏のすこたん企画とのやりとりの手紙は、出版メディアに携わる表現者の「心のゆれ」がよく表れていて興味深いです。当時の詳しい事情も知ることができます。留意しておきたい点は、現在はインターネットによって誰もが不特定多数に向けて情報発信が可能になっています。社会的影響力の多少を別にして、ある日あなたのサイトの記事に「傷ついた」と抗議してきた人がいたら、どう向き合えばよいのか…。山中さんの手紙はそんなことも考えさせてくれます。

 本書はすこたん企画と『金曜日』編集部の周辺に議論をとどめず、より対極的に差別を考えていくための視点に言及していて、大変学ぶことが多いです。欲を言えば「差別の判定は被差別者だけのものでいいのか」という点を初めて提起された藤田敬一氏や、同様の問題提起をされた柴谷篤弘・小浜逸郎両氏のこの件に関する意見ものせていただければよかったかな、とも思います。

 また本書は「反差別論の再構築へ」と題された叢書の1として企画されており、続編が期待されます。

 わたしは『金曜日』読者ですが、『金曜日』読者、特に昨年の一件がスッキリ しない方にこそ読んでいただきたい一冊です。

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