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コーナー●その5この問題を考えた [2002-01-06]

●その5-20 
[02-01-06アップ]
Hさんへ蛇足

松沢呉一

 

 

 年末進行でバタバタしていて、返事が遅くなってごめんなさい。
 概ね合意が成立したことは了解しました。とりあえずよかったなと。
 Hさんの指摘は私にとっては大変有意義な契機を与えてくれたので、感謝してます。
 もはや蛇足の部類で、公開でやりとりするようなものでもないでしょうけど、念のため、今回Hさんが書いていたことについて、何点か触れておきます。

[私は「文脈を考慮する」というのも、けっこうあいまいなのではないかなぁと思っています。表現された文章も、解釈によってはいろいろな意味をもってしまいかねない場合もあると思います。]
[出版業界のことは詳しくしらないので、もし、文脈に関するルールが明確になっているようでしたらご指摘ください。]

 なんで曖昧かというと、個別に判断する以外ないからでしょう。したがって、出版界にも特別なルールなんてないと思います。

[「傷つく人を減らす」というのは松沢さんには否定されてしまいましたが、私も傷つく人がいてもしょうがないと思いますし、完全になくすことはできないと思いますが、著者の負担にならない程度の努力で減らせるものなら、減らし た方がいいんじゃないかなと私は考えています。] 

 実は、ああは書いたものの、私自身、普段まったく気をつけていないわけではありません。ただ、傷つけたとしても、そのことで非難される筋合いはやっぱりないのではないかということです。
 たとえば、人の文章を批評します。そのことで、書いた人が傷ついたとしても、それに対する反論は傷ついたことを根拠になされるのでなく、その批評の内容を再度批評すること、すなわち内容に反論することでなされるべきではないかと思うのです。
 となると、不当な内容をもって人を傷つけることに関しては気をつけているとは言えます。
 仮に「女は男より頭が悪い」という説があるとするじゃないですか。単なる思いつきでしかないようなものであれば書きません。しかし、統計的に有意であるようなデータを得た場合、私はやっぱり書くと思うのです。それをもって女性差別を加速させる人がいるのだとしても、そのような利用をする人が悪いのであって、事実として私は書きます。

 では、それ以外では気をつけていないかというと、それなりに気をつけているんですね、やっぱり。自分の中で、どういう基準で何を気をつけているのか、うまく説明はできないんですけど、ここでも個別の事情を鑑みているような気がするんですよ。
 たとえば私は「ハゲ」という言葉で傷つく人がいるかもしれないことを想像しつつも、この言葉を使用することがあります。
 しかし、この言葉の使用を控えることがあります。個人に使用する場合です。
「ポット出版の沢辺さんはハゲである」という原稿は書かないということです。たった今書きましたけど、あくまで例です。沢辺さんは本当に毛が薄いですけど、ここではこれを指摘したいのではありません。だったら書かなければいいんですけど、沢辺さんは気にしないだろうとの前提で書きました。でも、こんだけ書くといくらなんでも気にするかもしれないなと思ったりもしてます。くどいです。
 でも、「気にしているだろう」とかなりの確度で思われる人や気にしているのかどうかわからない人にはまず書きません。
 といったように個別に判断していて、「ハゲ」という言葉を気にする人も気にしない人もいる「毛が薄い」集団に対しては、わりとざっくり使用しているかもしれません。
 これが普遍的な意味をもつのかどうかわかりませんけど、私はそうしているらしい、ということです。

 で、「個室13」に関しては了解しました。個人の嫌悪に関してはいくらでも表明してよく、表明してくれた方がいいと思ってます。
 Hさんと今後どこかで会ったり、メールのやりとりをする場合は気をつけるという程度には私も気をつけているということであり、そのことは言われないとわかりません。
 こういう個人の好悪である限り、「オレはゲイが嫌いだ」ということさえ表明していいのではないかとも思っていたりもするのですが、これは自分でも結論が出せません。もうちょっと考えます。

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