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コーナー●その5この問題を考えた [2001-10-10]

●その5-01 
[01-10-10アップ]
私なりの意見

ういろう(一般社会人)

 

はじめまして。
普段からの伏見憲明さんの言動に非常に共感するものがあって、その興味の延長線上から、一連の「週刊金曜日」の問題に興味を持つようになりました。

トークライブにも出席しておらず、また、関連する文章に全て目を通したわけでもないので、全貌をきちんと見据えたわけではないのですが、私なりの意見がまとまりましたので、一言お伝えしたく、メールを差し上げます。論点がずれていたり、すでに議論を交わされている内容であれば、ご容赦ください。

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まず、使用される文脈によって
差別かどうかは吟味されなければならないと言う主張は100パーセント賛成なのですが、今回の場合、それがちょっと腑に落ちないんです。なんでかなー、と考えてみたら、これが「週刊金曜日」と言う固い雑誌の、しかもタイトル見出しに使われた語であったから、ということが私にとっては問題のようです。

週刊誌によくある露悪的な扇情的なタイトルをつけ、内容は実は割と中立に書かれていた、という事例。でも、その実際的効果はタイトルのみが先行して巷間に流布していきます。タイトルは文章内容と切り離して、タイトルそれだけで、一つの表現の全体として評価される側面があることを考えなければいけないと思います。

今回のタイトル、「伝説のオカマ 愛欲と反逆に燃えたぎる」を一つの独立した表現として評価すると、扇情的な効果の期待は強く匂ってきます。それが即差別であるとは言い切れないんですけれども、やっぱりなんか、ひっかかります。

しかもそれがゴシップネタのどうでもいいとみなされているメディアではなくて、日本の知識人・オピニオンリーダーにアクセスできる権威ある「週刊金曜日」という雑誌の見出しとして存在する。ずるい危うい手口を信頼の置けるメディアが使ってしまったような気がします。普段冗談を言わない上司がやにわに卑わいなジョークを投げかけてきたときのような困惑感とショック。ちょっと大げさに言うとそんな感じを受けます。

それから、「オカマ」の表現は本人が積極的に自らの呼称として用いており、本人に尊敬の意を表して使われているという状況。 また、ゲイカルチャーの成熟に伴って、「オカマ」と言う語が以前の差別的意味合いから、ゲイテイストをポジティブに表現する語に変化しはじめているという環境的な状況。
このような状況を考慮して、「オカマ」と言う言葉に即「差別」と反応してしまう、そしてそれを撤回することによって解決を図るのは「言葉狩り」ではないか、という主張に対して。

このような柔軟な発想からの意見が強く出てきたことは素晴らしいと思いました。たしかに「差別」「差別」と強面の主張を繰り返すだけでは、事態は硬直して隠蔽されていくだけですよね。数年前まで、メディアがあまりにも私たちに対して無知・無神経だった時代は、上の主張も一つの大きな意味を持っていましたが、一通り、理解の土台ができた(ように思える)昨今では、問題に焦点を当てることができたエネルギーをうち消してしまうのではなくて、それを利用して、その上に私たちのエネルギーを上乗せして、よりよい方向により力強く発信していく、という対処の方がはるかに効果的です。そして私たちゲイもその対処に対応できるくらいの力を蓄えてきたような気がします。(今回のトークライブもその「力」の表れですよね。)

それでもやっぱり今回の事態に関して言えば、すこたん企画の抗議から、週刊金曜日の謝罪という一連の動きは私には納得できました。社会全般からの基準では、まだまだ「オカマ」と言う表記は市民権を得てはいないんじゃないでしょうか。上の二つの状況があったとしても、それはいわば裏事情であって、この言葉自体がもつ意味合いは依然と一般大多数の当事者には心地よくないものです。あのタイトルには、上の一部の状況と一般大多数の当事者の感情をつなぐ工夫が必要な場面でその努力を怠っていた落ち度があったと思います。

私はあの表現には悪意は感じずとも軽率さを感じました。

ということで、私としては今回の一連の事件は、どちらがわにも納得できるものでした。ただ時代の方向は、表層的紋切り型の差別反対から、より生き生きとした柔軟な差別撤廃の方向へ向かっていると思いますし、その方向へ向かうように努力していくべきだと思います。今はその過渡期と言うことではないでしょうか。そのことを考えると、今までゲイの社会に大きな貢献をしてきた「すこたん企画」が対話を辞退していることは非常に残念なことであったと思います。

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