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真実・篠田博之の部屋[番外8] [2001年1月13日]
真実・篠田博之の部屋
[番外8]
 では、続いてのテーマに入ります。
 去年の暮れ、「ダークサイドJAPAN」の久田君に聞いたところによると、私が風俗店から「お車代」をもらっているとの噂があり、久田君はそう語っていた人物に「一緒に風俗店の取材をずっとやってましたけど、そういうものをもらう人じゃない」と否定してくれたとのことです。
 久田君と取材している時に店が金を渡そうとしたことは一度もなかったと思いますが、体験的な取材では普通に金を払っていること、懇意の店でも金を払って遊んでいることを久田君はよく知ってます。店から金をもらうような人間なら、ましてタダで遊ぶってもんでしょう。東京の新風俗系の店では、ほとんどお車代が出ることはありませんけど、「タダで遊んでいってください」という誘いは多いですからね。
 この話は既に原稿にしてますけど、私が店から現金をもらったのは、従業員として働かせてもらった時だけです。「普通の従業員と働かせてくれと言われて働いてもらったんだから、金を払わないわけにはいかない」という、あちらの言葉に納得したのです。
 さて、このお車代や接待についてどう考えたらいいのかというテーマは、以前、「創」に詳しく書いていますし、「黒子の部屋」でも書いてますけど、読んでいない方のために簡単に説明しておきましょう。
 結論を言うなら、私はわからないのです。風俗店からテレカをもらったり、Tシャツをもらったことは何度かあります。客が土産に買ってきたケーキや、女のコが旅行に行って買ってきた地元名産のお菓子の類いをもらったこと、コーヒーやジュースを出してもらったことは、それこそ何十回もあるでしょう。プライベートでローションプレイをやろうと思って、ペットボトルにローションを入れてもらったこともあったな。雨に濡れた時にタオルをもらったことや傘をもらったこともあります。「無料パンストプレゼントのキャンペーンのために大量にパンストを買いこんだんだけど、余っているので、もって帰りませんか」と言われたこともありますが、これはお断りしました。
 これらに対しては、私も手土産をもっていくことがありますし、自分の本などをあげることもあり、どっちもどっちという話であって、どこの社会にだってよくあることでしかないでしょう。
 お歳暮やお中元の類いも毎年たくさん送られてきます。中身はほとんどが缶ジュース、コーヒー、セッケン、ビールの類いでありまして、出版社から送られてくるものと同じようなもんです。出版社からのお歳暮、お中元同様に、こちらからも同額程度のお返しをした方がいいと思いつつ、たいていそのまんまになります。
 一度、お歳暮に、デカいタラバガニが送られてきて、たぶん7、8千円するものでしょうけど、これもおいしくいただきました。あんまし付き合いのない店だったらためらうところですけど、仕事以外でもメシ食ったりすることがある懇意の店の社長からだったので、このくらいはギリギリいいかと。
 地方取材の際に、お土産をもらい、うちに帰ったらモンブランだかどこだかの万年筆が入っていて、ついでに万札も入っていました。何万もするようなものではないでしょうから、万年筆は許容範囲かもしれないとの気持ちもありますが、万札はマズいと判断して、どっちも送り返しました。おかげで、こことは関係がきまずくなり、以来、付き合いがなくなりました。
『新宗教の素敵な神々』に書いたように、宗教団体の取材の際、教団のマークが入ったボールペンをもらったことがありますが、この教団は十万くらい入っていそうな封筒まで出してきたため、押し問答の末、金を突き返して逃げるようにして帰ってきました。ボールペンはもらいましたが、現金はマズいという感覚が強くあるのです。
 風俗店からは、タダ券をもらったことも何度かありますが、使ったことはありません。マケてもらうのが許容限度ギリギリかと。
 体験取材もすべて金を払ってます。「受け取れない」「受け取ってくれ」の応酬になって、結果、女のコの取り分だけ払うこということも時々あります。
 従業員が社長から「松沢からは金を取るな」と命じられていて、その場に社長がいなかったためにあちらは受け取ろうとせず、「あとで社長と話す」と言って、この時はタダで取材して、そのあと社長に話をして、次の取材の際に全額払い、あっちとしては「一回はタダで取材させた」と納得し、私としては「女のコの取り分をまとめて払った」と納得して、妥協点を見いだしたこともあります。
 メシ代や喫茶店代を出してもらうこともよくありまして、これはこっちが出すこともありますので、どっちもどっちではあります。わりと最近のことですが、「一度、松沢さんに僕の気に入っている店に来て欲しい」と言われ、てっきりキャバクラだと思ってついていったらクラブでした。帰り際、彼は万単位の金を払っていて、無理して私は自腹を切ろうとしたのですが、「いいから、いいから」という話になってしまいました。古くからの知り合いでして、ここで無理に金を払うと、やっぱり人間関係がまずくなりかねないでしょう。今度、こっちがおごればいいやと思いつつ、その機会はまだありません。「僕の気に入っている店に来て欲しい」と言って連れて行けるクラブなど私にはないのです。
 考えてみると、よく知らない出版社の人に、キャバクラのハシゴをさせてもらったこともあって、あん時も数万円払ってもらっているのだから、相手との関係からして、それよりまだ風俗店の社長とクラブに行く方がまだましかと納得しつつ、イマイチすっきりしないものがあります。
 さらに、こんなこともありました。地方取材の際に、店がホテルまでとっていてくれて、普段は5千円から7千円程度のビジネスホテルにしか泊まらないのに、一泊1万円以上しそうなホテルで、「迷惑なことしやがる」と思いつつ、朝、金を払おうとしたら、既に店が払っていました。そこで私は払うと言ったのですけど、「前に世話になっていますから」と言われてしまいました。彼が東京に来た時に「東京の風俗店を見て回りたい」というので、彼に付き添って、何軒か紹介してあげたのです。この点では、逆にあちらに借りがあったとも言えますから、これでおあいこかもしれません。
 でも、よく考えると、この時の宿代は、どっちみち出版社の経費ですから、こんなことしてもらっても私個人は何の得にもならず、接待されたのは出版社であり、相変わらず私個人としては貸しがあるとも言えなくもありません(私としては、特に貸し借りで、彼を案内したわけじゃないんですけど)。
           *
 私の中には、このような一線がなんとなくはあったりするのですけど、これまで何度か書いているように、お車代をもらうこと、タダで遊ぶこと、タダで体験取材することが何故いけないのか、数百円、数千円程度の物品をもらうことを何故私はいいことにしているのか、実はよくわからないのであります。
 よくこんなことを言う人がいます。
「いくら金をもらっていても、それによって原稿内容を変えていなければいい」
 確かにそうだという気もするのですけど、そうも人間って強いかぁ? 例えば、体験取材をタダでやっておいて、悪く書いたり、ボツにしたりする勇気は私にはないです。「アサ芸」でデブをそのまんまデブに描いたり、内容がひどい時にボツにできているのは、やっぱり金を払っているからだと思うのです。私が店の立場でも、「金を払ってもらった以上、普通の客と一緒なんだから、悪く言われてもしょうがねえ」と思うでしょうし、金をもらっていなければ、「タダで遊んでおいて、何言ってやがる」って腹立ちますもん。
 私は意志薄弱ですから、タダで遊んだ店のことを悪くは書けず、ボツにもできません。意志薄弱のくせに、ヘンなこだわりが強いので、もし金をもらったりしたら、わざわざそのことを明記した上でボロクソ書きかねない気もしますが、どっちにしても、原稿の内容が変わってしまいかねない気がします。
 そう思うからこそ、極力こちららは金を払い、かつ、原稿内容を変えないで済む範囲の供応は受けていいと思っているような気もします。タラバガニを食ったくらいなら、悪く書く時は書けますからね。
 しかし、これはものすごく個人的な線引きであって、一般的なルールとしてはどう考えればいいのでしょうか。全部ダメというのが一番すっきりしますけど、お歳暮やお中元まで全部送り返すのは面倒ですし、人間関係が悪くなりそうです。さらには、インタビューでも、店が女のコに取材のギャラを払っていることがあるため、その金額分、接待してもらっていることになりますから、厳密には、どんな取材でも金を払わなければならないことにもなりかねません。
 こういった問題を一度しっかり誰かと論じ合いたいのですけど、誰と論じ合っていいのかよくわかりません。私がお車代をもらっているとの噂を流している方、私と議論しませんか。
           *
 次回、ここから、もうちょっと話を広げていきます。
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