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沢辺の気文 [2000年03月10日]

版元ドットコムがめざすもの
『出版ニュース』
1863号

『出版ニュース』1863号・2000.3.中旬号に書いた文章です。
発行・出版ニュース社 電話03-3262-2076
URL http://www.snews.net/
みなさん、買って読みましょう。
版元ドットコムURL●http://www.hanmoto.com
(沢辺)

版元ドットコムがめざすもの
沢辺均・ポット出版

版元ドットコムというサイト(いわゆるホームページですね)を開いた。URLはhttp://www.hanmoto.com/。
この版元ドットコムは「版元が運営する、本のデータベース、インターネットでの送料無料販売と決済、本のダウンロード販売」が主な目的のサイトだ。
幹事会社として一緒にとりくんでいるのは、凱風社・青弓社・第三書館・太郎次郎社・批評社で、ポット出版をふくめて六社。二月一七日木曜日には、会員として参加してもらうための説明会を神田パンセで開催した。
説明会に参加してくれた出版社は九〇社・一二〇名。
その場で出してもらったアンケートでは、幹事会社をのぞいて、参加したい▽一五社、参加の方向で検討▽二一社、これから検討▽三四社、その他▽三社という意向だった。
ほかに、版元ドットコムからメールで案内を送った、主に関西、長野など方々からも「当日は参加できないが、資料がほしい」という返事をもらっている。
おっかなびっくりで始めたこのサイト、想像以上に嬉しい反響をもらった感じだ。
●版元ドットコムは「中抜き」
さて、この『出版ニュース』をお読みのみなさんが版元ドットコムにもつであろう「わだかまり」にいきなり答えようと思う。ただし、以下はまったくの私見だ。
幹事社や会員として参加した版元には、版元ごとに異なる考えがあるだろう。しかし、中途半端なことを書いてもわかりづらくなるだけだと思う。版元ドットコムのある一つの考えと、受け止めていただきたい。
皆さんのわだかまりは「書店を中抜きしようというのか、そして、ますます危機に追いやるのか」ということだと思う。
実際、ある幹事社のメンバーはこの種のことを、書店から言われたそうである。
まず第一に、確かに、このシステムは書店と取次を抜くことに間違いない。出版社が直接お客に送料無料で送るのだから。
何らかの情報から入手したいと思った本が、書店にない、そして一日も早くその本を欲しいというお客がいたら、一刻も早く届けて代金をもらうのは当然だと思う。
中抜きをするのは、そういう理由からだ。
また、送料無料は簡単にできる、だからやるのである。
書店と取次のマージンは、お客に届けて売るための費用だと思う。その仕事を、運送業者と出版社がする。そしてその費用は、宅配便の送料が下がった現在では十分まかなえる。だから、送料無料なのだ。
にも関わらず書店と取次の仕事は当面なくならない。
店頭で直接手にとって中味を見なければ買う気にならない本が、山ほどあるはずだ。
あの、アマゾンドットコムの一九九九年の書籍売上げは十三億ドルを予想しているそうだ。一方アメリカの書籍の売上げは二〇〇億ドルを超えているという。
アマゾンドットコムのシェアは七%程度。
この数字は、確かにすごい数字だと思うけれども、まだまだ、本を手にとって見てみたいお客の多さの証だとも思う。
インターネットでの販売などまだこの程度。
実際に手に取ってみたいというお客のほうが、多いのは、本という商品が、中身を眺めてから買うことの多い商品だからではないだろうか。
本の商売敵は、むしろゲームだったりビデオ・DVDだったり、音楽だったりする。こうした商売敵といい意味で闘うためには、内容はもちろん、販売機会を増やすことが必要なのだ。
書店はもちろん、通販や共同購入、売店も、そしてインターネットでの販売もどんどんやって、全体に販売の機会を増やすべきだ。それに、インターネットでの販売は、書店でもできるのだ。大きくは紀伊國屋書店、小さな書店でも往来堂がやっている。どちらも可能性を持っているのではないだろうか。
もちろん、書店はもっと大きな状況のなかで厳しい状態におかれていると思う。しかしその最大の原因は、これこそまったくの私見だが、マージン率と運営方法の問題なのではないだろうか。
●本全体の販売機会を増やす
第二に、中抜きもするけれど、書店でももっと売ってもらいたいと思っている。そのために、書店への直送・直接決済をおこなっていく。客注という書店での販売機会に対応するためだ。
ある本が欲しいというお客さんは、みな一刻も早く手にしたいのだろう。しかし、そういうお客の中にも、出版社に個人情報を知られたり、インターネットでクレジットカードを使いたくないお客はまだまだ多いと思う。
書店に直送・直接決済をするのは、これに対応してもらうためだ。
第三に、版元ドットコムのデータベースは、書店や取次の販売活動に役立ててもらうために、積極的に提供したいと考えている。
新刊データなどは、書協に自動転送しよう考えている。
書協がめざしているのは、業界の基盤となる「データベースのデータベース」だという。にもかかわらず、月単位以上の頻度で、電子データ(Eメール・FD)でおくられる単行本の新刊情報は、二〇〇〇年になってやっと五〇%近くだそうだ(発行点数にたいするデータでの点数)。出版社がもっとこの「データベースのデータベース」をもり立てることが必要だと思う。書協のデータベースが販売のための商品情報の整備になると思うからだ。
さらに、書店・取次にも積極的にデータを提供しようというのは、本を売るための役に立つと考えるからだ。
書店が、取次が、本を売るために必要なのは、実物の本の次に、商品の情報なのではないだろうか。データベースを販売に役立ててもらいたいのだ。
版元ドットコムのサイトが、書店を中抜きするのは事実である。しかし、それは書店をなくそうとか、どうなってもかまわないなどというのではまったくない。販売の機会を増やすことで、本全体の売上げをより多くしたいからなのである。
●内容検索のできる本のデータベース
版元ドットコムはどんなサイトをつくろうとしているのか。
このサイトでは、内容で検索できるデータベースを、読者・お客に提供する。
凱風社と批評社とポット出版の、書誌データと簡単な内容紹介・目次を入れたテスト版のデータベースで実際に検索してみた。
「エジプト」という言葉で、全文検索すると、『 アフリカ旅物語 北東部編』(田中真知/凱風社)と、『女の歴史』(J・L・デーウィーズ/批評社)と、『神の刻印 (下)』(グラハム・ハンコック/凱風社)と、『マヤの予言』(エイドリアン・ギルバート/モーリス・コットレル/凱風社)の四冊がヒット。
『女の歴史』は、「〈女の歴史〉をその社会の生産関係を基軸に、女の労働を歴史的に叙述した恰好の入門書」という内容。古代・エジプトの女の労働に関する記述の目次にヒットして、検索されている。
もちろん、たった三社のデータで四冊ではヒットしすぎだ。実際に、多くの版元に参加してもらってデータベースが充実したら、さらに絞り込み検索をしなければなるまい。
しかし、エジプトを知りたいという問題意識から、たとえその本の一部分にしろ、古代エジプトの女の労働の状態を書いた本の存在を知ることができれば、問題意識は大きな広がりをもつこともできるはずだ。
本のデータベースが、本の世界・本を読んだり利用したりすることを、ますます面白く広げていくことができると思うのだ。
現在、インターネット上の本のデータベースは、書協のbooks.or.jp、紀伊國屋などの書店がウェッブ上で開いているサイバー書店、取次関係の「サイバー書店」、図書館関係などがある。それらのデータベースで内容検索ができるものは、まだほんのわずかだ。
さらに、内容検索ができるものでも、その内容はオビのネームなどを利用した、二〇〇字とか三〇〇字程度のものが多いようだ。
これは、まったく当然。一日に数百も出される新刊の紹介文を、オビなどに頼らないで書いていくためには、ものすごい人件費がかかってしまう。
そもそも紹介文を書く作業を、書店などにやってもらっていては出版社として恥ずかしいと思う。内容紹介は、その本を熟知している出版社自身がつくって、提供すべきものだと思う。さらに、本の一部、例えば前書きなどを紹介するために著者に了解を取らなければならない。これは、やはり出版社の役割。
だから、出版社の責任で、内容の検索できるデータベースをつくるのだ。
●お客にも、書店にも直送する
このデータベースで検索した本は、サイトで直接販売する。
カード決済で、送料無料。Eメールでサイトから注文連絡を受けた会員版元が、翌営業日には必ずメール便などでお客に直送する。在庫切れ、一時的な注文殺到には、品切れなどの表示や断り書きで対処する。
カード会社の手数料を含む決済手数料は一五%。会員版元は八五%を受け取ることになり、ここから、送料を負担する。
二〜五日でお客のもとにとどくように、というのが基準。メール便を利用してもほぼこれで送り届けられると考えている。宅配便でおくる会員版元がいてもかまわない。メール便の二〜五日での配送よりはやくなるのだから。
書店への直送の場合の正味は八〇%の買い切りにした。送料は版元会員の負担。
決済は、郵便振込を利用した後払いで振込料を書店に負担してもらう。振込料は七〇円、定価二〇〇〇円の本で三・五%、定価一四〇〇円で五%になるので、栗田出版販売の「本やさん直行便」の八五%を平均で下回ることができると思う。また、保証金(栗田が五〇万円)はとらない。
書店には、事前に「書店会員」として登録してもらう。この登録で、八〇%という正味をサイト上で表示することができる。
注文は、データベースの検索結果から。
配送は、お客と同じでメール便を基準にする。
さらに、「版元ドットコム取扱書店」をサイトや会員各社の広報媒体で宣伝することを考えている。個人情報をあかさずに、書店でなるべく早く入手したいお客さんがいると思うからだ。もちろん、これは、書店に了解をえることがあくまで前提。
さて、この書店への直送は、当面一年をめどにした「実験」として取り組む。正直、代金の後払いがどのようなことになるか少し不安でもある。しかし、流通の改善も待ったなしに求められていると思う。できることからやるしかないのだ。三月七日には都内の書店、数店と懇談会を開く。版元ドットコムの取組に理解を求めて。
●デジタルに出版社が習熟する道具でも
いま、出版社は否応なくデジタルに取り組まなければすまなくなっていると思う。
原稿をフロッピーやEメールで受け取るのは、まったく珍しくなくなった。いや逆に、そうしたデジタルデータで原稿を受け取ることが体に染みついてしまっていて、手書き原稿だと「入力を頼まなければ……」と後ろ向きに考えてしまう。
本を制作する過程もかなりデジタル化されている。がしかし、オンデマンド印刷を活用したり、インターネットでなんらかの本のデータ販売といった「今後」を考えると、出版社は、もっともっとデジタルに習熟しなければならない状況だ。
流通過程も、今後ますますデジタル化されるだろう。それも、VANなどの大がかりで高コストのものでなく、インターネットを基準にしたものになるはずだ。
名古屋の三洋堂書店は、インターネットで全店の売り上げ情報を出版社に公開している。
日販も、在庫情報をEメールで送るように要望してきた(Eメールで送るために五千円、エクセルのテンプレートになんと二万五千円、とばかげた条件をつけてきた。インターネットはそれぞれが自己責任で準備するのが原則だ)。
インターネットで受注・請求・決済をすませている業界は珍しくなくなった。
インターネットはますます、ローコストで情報を共有したり、連絡したりする道具として使われていくと思う。
版元ドットコムの意味は、そうした生産と流通(そして連絡)のデジタル化に出版社自身が習熟するための機会をつくることでもある。
●インターネットでお客の掘り起こし
既刊点数はわずか二五点、ここ二〜三年でようやく年間発行点数が六点前後のゴマ粒のようなポット出版だが、Eメールでの本の直接注文は確実に増えている。二年前は、月に一冊の注文があればいいほうだった。それが一年前には、月に六〜八冊、さらに、昨九九年一二月が一九冊、今年一月が二六冊、二月も二二日までで二〇冊というように増えてきた。
ポット出版が送料無料にしたのは一〇年近く前だし、この間の電話やファックスやハガキでの直接注文はまったくかわらないことを考えれば、これまで書店に本がなければあきらめてしまったお客が注文をしてくれていると思っている。
あまりに楽観的な見方かもしれない。
だが、発行点数のもっと多い出版社であれば、さらに多くのお客の掘り起こしができるのではないだろうか。
インターネットという道具を手にしたのだから、積極的に使いつくしていく、それが版元ドットコムの目標だと、私は考えている。
【以下、できるだけコラムで入れていただきたいです】
●版元ドットコムのURL
http://www.hanmoto.com/
*現在はまだ、出版社のための資料類だけのサイトです
●版元ドットコムのデータベース追加項目
*以下は書協のデータ項目に追加するものです
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○著者ヨミ・4(何人でも)
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○著者・欧文表記(アルファベットのみ)
○製本 (上製・並製)
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○目次
○著者プロフィール
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●版元ドットコム連絡先
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〒150-0001 渋谷区神宮前4-13-11
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