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[第5章●録音データのデジタル化道]
9… 北海道でもロンドンでも1分3円弱
[2005.02.08登録]

石田豊
ishida@pot.co.jp

SkypeにはSkype OUTという機能がある。Skypeから、一般の電話回線網に対して「電話」をかけられるというものだ。この機能があるからこそ、Skypeは注目されているわけだし、同時にこれが開発者のビジネスモデルになっている。つまりは有料である。

まずはSkypeのサイトに行って、10ユーロの「電話代」を先払いする。Skypeアプリのメインウインドウの「My Skype」パネルにある「Click here to go your account page」をクリックすれば、そこにいける。ここでクレジットカードを使い、10ユーロの電話代を支払う。ぼくの場合、VISAでは処理が最後まで進んだのに、結局は「CANCELLED」になってしまった。なんでかはわからない。MasterCardを使ってやり直したところ、すんなり認証された。

購入した日のレートでは10ユーロは1365円(クレジットカードレート、つまり銀行間レート+2%)であった。これくらいの金額なら気軽に払える。

この処理が終われば即座にSkypeから一般の電話網に電話をかけることができる。たとえば075-123-5678に掛けたいのなら、ダイアル欄に「+81 75 123 5678」または「00 81 75 123 5678」(ともに空白不要)といれればよい。相手の電話機が呼び出され、つながるとコンピュータのスピーカー(またはヘッドセットのスピーカー)から相手の声が聞こえてくる。音質は非常によい。電話網での通話に比べると、若干の遅延はあるものの、気になるほどではない。

肝腎の料金だが、これは相手先によって異なる。日本国内の固定電話にかける場合は€0.019(2.59円)/分、日本国内の携帯電話には€0.125(17.08円)/分である。アメリカやヨーロッパの固定電話に対しては一律€0.017(2.32円)/分、韓国には€0.024(3.28円)/分であり、国別料金リストを一瞥したところ、もっとも高い東チモールでも€1.17(159.70円)/分だ。安いよね。国内ならどこにかけても3分10円。海外、少なくとも欧米へは市内電話より安くあがる。

安い電話のシステムってのは、最近、いろいろと出現している。どれがいいか、ぼくにはまったくわからないし、正直あまり興味もない。そんなに電話をかけないからでもあるが、なんだか面倒くさいので手をだしていない。その点、Skypeは面倒がなくていい。アプリをダウンロードしてくるだけで使い始められる(申込書を書いたり、なにかブツを買ったり、工事があったりすることがない)。Skype OUTしたいのなら、クレジットカードで€10払っとけばいいだけだ。年会費だとかなんだとかもないので、「はたしてこれはペイするだろうか」とかと思い悩むことはない。千円ほどをドブに捨てるつもりで始められるし、いつやめても後腐れもない。

もっとも、マイクがついていないパソの場合は、それを買わないとはじめられないが、それにしたところで、ヘッドセット(ヘッドホン+マイク。金貸し会社のCMでおなじみ)は千円もしないのが何種類も売っている。

Skypeがいいのは、この気軽さだ。工事の申し込みだとか、月々の基本料だとか、はたまた広告付きのメールが送られてくるだののメンドーなことは一切なく、しゃらっと始めることができ、経済的にも、はっきりトクになる(月々の基本料とかがあると、使用料の損益分岐点が生じたりするでしょ)。

ぼくの場合、日常的に電話で連絡をとる人々というのは、もちかければSkypeを始めそうな人が多いので、直接的に通信費の削減につながりそうだし、出張が多い人とか、海外への連絡が頻繁にあるような人なら、もっとドラスティックに効いてくるだろう。

しかし、ホントのことを言えば、そういう「電話料金をどう削減するか」なんて観点からこのシカケが面白いと思っているわけではない。「いままであることの費用をどうこう」といったセコい世界ではないように思えてならないのだ。なんだか、まったく別の世界があるような予感がする。そこに些か興奮しているわけである。

たとえば、どんなことか。

まずはつまんない例から。大会社ってのはダイアルインになっているけど、基本的には電話は会社にかける。その上で、相手を呼び出してもらわなければならない。Skypeは(ケータイと同じように)、その相手に直通である。しかも、あらかじめ相手先リストの中に含めておくと、相手がどのような状態であるかがわかるようになっている。

言い方を変えると、Skypeアプリの中で「自分の状態」を意思表示しておくことができる。選べる状態はOnline、Skype Me、Away、Not Available、Do Not Disturb、Invisible、Offlineの7通り。この状態を示すアイコンが相手(がこっちのSkypeIDを登録しておいていれば)のウインドウに表示されるようになっている。もちろんこっちのコンピュータに電源が入っていない場合はOfflineとなる。このあたりのイメージはインスタントメッセージをお使いの方にはおなじみであるだろう。

つまり、相手の状態がわかる。電話をかけていいかどうかが、かける前にわかる。電話は無条件に相手の仕事に割り込みをかけることでもあるので、時として電話をかけるのを躊躇してしまうものだが、このシカケなら、そうした心理的負担は小さくなる。

それにSkypeは音声だけでなくインスタントメッセージの送受も可能であるから、声で会話しながらテキストを送ることもできる。たとえばURLや電話番号などは、言葉でしゃべるより、コピペして文字で送る方が早くて正確だ。ファイルも送れるから、写真などを示しながら会話することもできる。

ある程度以上の頻度で電話連絡をしあう必要のある人々の間でSkypeのIDを公開し合って運用すれば、かなり効率のいい電話連絡システムができるはずだ。

ある程度以上の頻度で連絡し合う関係というのを考えるなら、夢はもっとひろがってくる。

ぼくは毎日ひとりでシゴトをしている。それだから、時として「会社」にあこがれに似た感情がわいてくる。いいなあ、何人かの人が狭い空間に集まってシゴトしているのって。

人が集まっていることだけでも(幾多の面倒くさい、うっとうしい、やかましい、ことはあるものの)さまざまなメリットがある。小さな問題は即座に解決するし、自分ではけっして発想することのできないアイデアをもらったりもできる。

そこで、もしかしたらSkypeをつかって、ひとりオフィスの人たちが擬似的に「会社のような空間」でシゴトをすることができるのではないか、と狙っているわけだ。Skypeは3者以上で会話することもできる。昔のシカケでいえば、パーティラインだね。このモードでつなぎっぱなしにしておけば、仕事場はうっすらとした喧噪の中にいるってことにはなりはしないか。

これはちょっと面白いプランだと思う。

しかし、シゴトのコアタイムがこうなっていると、うっとうしいかもしれない。

そこで、もうひとつのアイデアが「Bar Skype」。会員制なんだけどね、たとえば毎夜23時から25時まで開いている。その時間帯にヒマがあれば、顔を出す。まさに昔のパーティラインですわね。アイディアの交換とかをするわけだ。

インスタントメッセージ、つまりチャットでもそういうことはできる。でも、文字を綴るというのは、けっこう体力のいる仕事である。ちゃんとしたことを伝えるための文章というのは、書くのにかなりの時間がかかる。したがって、チャットでちゃんとした話をすることはできない。脊髄反射だけに依拠したようなテキストの投げ合いになる。おしゃべりなら、もっと簡単である。

これを実現しようとすると、いまのままのSkypeの仕様では、どうも無理っぽい。しかし、どこかに抜け道があるはずだ。

なんだかいろいろ面白そうだぞ。

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