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[第12章●パーソナル“なんでも”データベースのすすめ]
4… でかくて黒いからダイコクと名付けた
[2004.09.16登録]

石田豊
ishida@pot.co.jp

この章の前回記事は1年も前に書いたものです。ほんとはその後すぐに続きを書こうと思っていたのだが、なんだかんだで日にちがたってしまいました。そのウラ事情は、これ以降あきらかになっていくだろうと思います。現在進行形の「本にしてしまえ」と交互にアップする予定です。

「蔵(gura)」とはぼくが作った「個人なんでもデータベース」の「固有名詞」である。ま、愛称ですね。システム的にはLinux+Apache+MySQL+PHP。世に言う「LAMP」。鉄壁とされる組合せだ。なんだか個人事業者にはデカすぎる組合せのような気がしないでもないし、そもそもその組合せに対し、別段の好奇心をそそられるということもなかった。ま、そういう世界もあるんだろうね、って感じ。

数年前になるが、友人の会社でダベっていたら
「石田さん、Webプログラマーのいいひと、だれか知らない?」
って尋ねられた。聞けば企画中のWebデータベースシステム(ま、商品カタログ+ショッピングカート付きという感じだと思っていただけばよい)があるという。この手のものはアリモノがいろいろところがっているのだが、そういう既製のものだと、少し不満なところがあるらしい。だから自社で開発してみよう、と。

しかし、あまり予算がない。いや、予算がないというより、不安があるといったほうがいいだろう。

ぼくもその昔、フリーランスのプログラマとして働いていた時期があるので(大昔です)よくわかるのだが、請負プログラム開発にとって、クライアントとベンダーの双方はともに「疑心暗鬼」というエンジンで動いている。クライアント側はシステムやプログラムのことがわからないので、カモられているのではないか、将来にわたってダイジョウブなのか、ヒミツを盗まれるのではないかなどとくよくよ考え、ベンダーはベンダーで、あとあとうるさく言ってくるんじゃないか、どうせ仕様変更しくさるのだろう、なんだか無理難題ばかり言うんじゃないかetcと。

不幸なことに、その疑心暗鬼が料金をかさ上げし、機能をこじんまりさせる。

もちろん発注側が大きな組織の場合は別だ。そういう組織ではそれなりにシステムのことをわかった人間もおり、開発外注にも慣れているので、ベンダーをうまく使うことができる(ただし、ベンダーとしては面白くないシゴトになる。大組織の求めているのは頭脳やアイディアではなく、ガレー船の漕ぎ手だからだ)。

小さな組織が発注するシステム開発はえてして失敗する。双方にとって、不幸で後味のわるい経験になることが多い。だから友人の危惧はよくわかった。

それにしても予算が少ないなあ。

「ぼくでよかったら、ぼくがその予算でやってみようか?」

話を聞いて、そのシゴトならMySQL+PHPの組合せで何とかなるだろうというアタリはつけていた。しかし、問題はその両方とも、うまれてこのかた、一度も触ったことがないということだ。いくら低予算であるとはいえ、触ったこともない武器をかついだ傭兵になるという蛮勇は、われながらホントにどうかと思う。まるっきりのバカであるか、悪者に相違ない。詐欺漢背徳漢と言われてもしょうがない。

だから、はじめての経験であることはちゃんと開陳しておいた。それでよければ、という条件である。

内心ではなんとかなるやろ、とは思っていた。一度も触ったことがないとは言っても、雑誌のなどでその紹介記事は見ていたし、スクリプトのリストもぼんやり眺めたことがある。そのときにPHPってのは自然言語との親和性の高い体系だなあとの印象も受けていた。世の中に実績もたくさんありそうだし、ま、なんとかなるでしょ。がんばれば。

で、あんのじょう、なんとかなりました。友人にもよろこんでいただけたし、ま、通り相場的にも、市価よりはお買い得だったんではないか。ぼくは勉強してお金が貰えるという意味では丸儲けに近いものではあったのかもしれない。

このシゴトの過程で、UNIX(Linux)、PHP、MySQLの威力をまざまざと知った。それまでもほんのままごと程度にはUNIX(いわゆるパソコンUNIXですね)は触った経験もあったが、日常の生活やシゴトには関係ないかなと考えていた。関心がなかったわけです。

やはり人間、いっしょの釜のメシを食わなければホントのところはわからない。Linux君は思っていたようなヤツではなかった。理念的にも実力的にも立派であるし、なにより、ぼくの日常生活の中でも十分活躍してくれそうだ。

だから早速、マシンを購入。DELLのだったら5万円もしないでサーバ機がある。もちろんソレ。それさえ買っちゃえば、あとはすべて無料なんだから、まるで桃源郷のようだ。資本主義のご時世とは思えない。

そのサーバ機は(これまた愛称を)「大黒」と名付けた。デカくて黒いからである。

このように書いてくると、ぼくはコンピュータとかにバシバシ愛称をつけてかわいがるおたくちゃんだと思われてしまうかもしれない。何を隠そう、その通りなのだ。

いいわけとしては、ネットワーク時代には個々のコンピュータの識別記号はどうしても必要だし、それを無機質なものにすると、ウロが来始めたぼくにはとうてい記憶することができない。別に愛しちゃっているわけじゃないけど、セットアップ時にそのマシンに適した、そして我が社の伝統の中での整合性のある名前を付けるというのは愉しみでもある。

ちなみに、もう一台の自作Linux機は「韋駄天」だ。もちろん「大黒」からの流れでこうなった。それにクロックが速いし。大黒は新しい伝統を作り出した第一走者になったわけだ。もう一台追加するのなら、きっと「毘沙門」になるでしょうな。

昔は機種で呼んでいた。Plusとか630とかという具合。PowerMacの9500を買ったときだったろうか。その余りの速さに感動して「小早川さん」と名付けた。もちろん小早いからである。これがいわば有機的な名前の嚆矢となった。おもうにMacの場合、機種名があまりに無機的なものになり、かつ相互に識別しがたいものになったことの反動であったのかもしれない。かといってApple社内の思い入れたっぷりの開発コードで呼ぶのも、ナンだしね。

2000年からつい最近までメインで使っていたPowerBookG3はLinz、iMacはHaffner(2代目)である。その流れだと、今使っているG4はプラーハということになるのだが、英語だとPragになっちゃうのよね。色気がない。かといってここだけPrahaという非英語を採用するのも変だしなあ、との煩悶があって、(シゴトもばたついていたという事情もあり)いまだに「ishidaのコンピュータ」のままである。

てなこと言いながら、ThinkPadはthinkpadなので、論旨は一貫していない。ThinkPadという名前がすきなんでしょうな。少なくともPowerBookとかムラマサとかいうよりはずっといい。

脱線が過ぎた。

ともあれ、Linuxサーバを導入して、はじめてやったのが「蔵」と名付けたなんでもデータベースの作成だった。一日もかからずにできた。シクミはおもいっきり単純なのである。

ぼくは生まれつきの「すすめたがり」なんだろう。気に入ったモノ・コトがあると、どうしてもヒトにすすめたくなる。だから、この自分で作ったシステムも、ヒトに勧めたくてしょうがない。もちろん、このシステムそのものではない。そのシステムの裏側の「思想と技術」を、である。大袈裟ですけどね。

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