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[第12章●パーソナル“なんでも”データベースのすすめ]
1… 住所録データベース風住所録データベースは必要か
[2003.08.31登録]

石田豊
ishida@pot.co.jp

友人知人取引先などの住所データを「住所録」データベースとしてコンピュータで管理している人は多い。みなさんどのようになさっているのか。周囲を見渡してみると、住所録専用のソフトを使っているか、アクセスやファイルメーカーのような「データベースソフト」で自製ないし提供されたテンプレートによるものを使っている場合が多いようだ。

これでまったく不満がないという人もあるが、それは少数で、話しているとみなさんなにかと不満を持っている。よく聞く不満を列記してみよう。

・項目が限定されていて、どの項目にも入りきらない情報がある
・たとえば電話番号が複数ある場合とかに処理に困る
・起動に時間がかかる
・入力が面倒だ
・不要な項目が多い
・遅い!

などなど。

私は、なぜみなさんこういうシカケを使ってらっしゃるのか、不思議でならない。なんでこういう形でなければならないのだろう。しかも不満を抱えながら。

なぜこのようなカタチでなければならないのか。愚見では、それは「紙の住所録」のイメージに引きずられているからだ、と思う。

われわれはみんなかつては紙の住所録を使っていた。それは住所録ソフトのイメージと酷似している。それはそうだろう。住所録ソフトは紙の住所録をエミュレートしたものだからだ。コンピュータプログラムの企画は、えてして手作業のエミュレートから発想される。住所を管理するソフトを作ろうと思った時、発想の出発点が今まで使っていた同目的のものであるのは自然だ。

そこで、コンピュータ上で「紙の住所録」と同じようなイメージのものが生まれた。でも、手書きとコンピュータでは生理がまったく異なる。手書きの場合にはなくてはならない構造が、コンピュータでは不要であるばかりかかえって邪魔になることも多い。

手書きの住所録が、なぜ「姓」「名」「郵便番号」「住所」などの“欄”に別れているかというと、その方が記入に便利だからだ。「電話」「ファックス」の欄がなければ、いちいち「電話03-1111-2222、ファックス03-1111-2223」と書かなければならない。「電話」とか「ファックス」の文字を書く分だけ作業が増えるのだ。

手書きの住所録が、なぜアイウエオ順のページに別れているかと言えば、そうしないと検索が難しいからだ。登録順に頭っから順に記入していけば、特定の人物の情報を探し出すのが難しくなる。

いっぽう、コンピュータでの「住所録」はどうか。入力のタイミングというか入力のための基礎資料は何か。名刺の手交であったり、電子メールの「署名」であったりするんじゃないかな。特に昨今は電子メールの署名から住所録に入力する場合が多くなっている。

これを基礎資料に「紙の住所録式」のデータベースに入力するのは、非常に面倒である。姓の部分を「姓」欄にコピペして、名の部分を「名」の欄に、という具合に不毛な作業を繰り返さなければならない。

だったらこんなデータベースはいかがか。

※名前欄と内容欄のふたつのフィールドしかないデータベースのイメージ図。

こういう住所録データベースなら、メールの署名をぐるっとコピーして「内容」欄にペーストし、検索性とか一覧性の向上のために(しかたなく)「名前」欄に氏名をタイプする。作業はずっと軽減されるはずだ。

こんな住所録で充分じゃないだろうか

こういうデータベースなら、先にあげた不満のなかの項目に関するものも、同時に解消できる。そもそも項目という考え方がないのだから、「不要な項目」もなければ「項目の不足」もない。相手によっては100の肩書きを列記することもできるし、著作リストを付記しておくこともできる。その人に関することを、なんでも自由に書き込めるのだ。

もちろん、こういういわば「フリーフォーマット」の住所録にも欠点はある。ひとつは「住所が東京都23区で年齢が30歳台、収入が1,000万円以上の独身男性」というような絞り込みが難しくなるということ。

でも、そんなこと、やりますか? やらないでしょう。普通。

データベースとは、そもそも「そういうことをするため」のソフトなのだ。条件を与えて、その条件を満たすものを検索・抽出する。それがデータベースなのだ。

データベースの英綴りは今ではdatabaseと書くのが一般的だが、最初はdata baseと2語で書いていた。このbaseは「基地」のこと。なぜなら、それは米軍のものだったからだ。

最初のデータベースは1950年代に米軍(国防総省)が作った武器や兵員などの装備状況をコンピュータ上で管理するためのものであった。だからbase。「現在兵員に余剰があってコレコレという武器を装備している部隊」ってな具合に即座に検索・抽出したい、という軍事的な目的がデータベースの最初のアプローチだった。

膨大なデータを自由自在にさまざまな角度から検索・抽出する。これがデータベースがもともともっていた指向なのだ。

個人ベースのせいぜい数百人のデータ、しかも、電話番号は何番だっけ、というような用途に使うのは、もともとからして「牛刀をもって」云々の類いのアプローチなのだ。

フリーフォーマットのデータベースを使うことの欠点はもうひとつある。年賀状などのタッグシール印刷ができない、ということだ。

個人的に言えば、私はタッグシールで宛名印刷はしない。そんなことするくらいなら年賀状なんかださない。だからもともとそういうニーズはまったくないのだが、ま、それは趣味好みの問題だ。タッグシールが必要という人もあろう。

しかし、試みに住所録を見返していただきたい。その所収のデータの中で、何割の相手に年賀状を出すだろうか。ごく少ないのではないか? 住所録の中にあるのはシゴト上で連絡をとる必要があるかもしれないという相手がいっぱい入っている(べき)だが、そのすべてに年賀状を出すわけではないし、現に出してないでしょう。

年賀状の一人当たりの受け取り数は約30通であるそうだ。たとえば郵政公社東北支社の報道資料にそう書いてある。しかし、住所録データベースに入っているのは、まさか30人ってことはないだろう。

登録したデータのほんの一部を年に一回年賀状に使うからといって、日ごろから全データを「タッグシール」対応で作っていくのは、ムダだ、と思う。

個人にとっての住所録データベースは、はたして「住所録データベース」っぽい形である必要があるのだろうか。

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